「買い手目線」で査定している業者を選ぶべし

不動産売却を依頼する仲介業者を選ぶときには、まず査定 ?をおこなってもらい、出してもらった査定価格 ?を参考にします。

ここで間違ってはいけないのが、査定価格は「高ければ良い」というものではないということです。高い査定価格を出した業者が優れている、といわけではないのです。

大事なのは「査定価格を出した根拠」です。

フドー先生
なぜその査定価格になったのか?を聞くことが大事だよ。

根拠を聞くことによって、「売却を依頼するにふさわしい業者かどうか」を見極めることができます。

真剣に売り主の立場になって売却しようと考えている業者なら、きちんと根拠に基づいた査定をするはずだからです。

根拠がなかったり、根拠はあるけど不十分な場合などは、その業者とは契約 ?しないほうが賢明です。

モモコさん
で、その根拠を聞き出して、それが根拠として十分かどうかは、どのように判断したらいいの?
フドー先生
「買い手目線」で算出されているかどうか?をチェックするといいよ。

業者が出してくれた査定価格の根拠が、「買い手目線」を意識しているものであるならば、信用するに値するでしょう。

もし「買い手目線」を無視し、論理だけで算出された査定価格なら、精度は高くないと言えます。

ここでは、「買い手目線」で査定するということの意味と、その重要性について説明します。

査定価格を決定するプロセス

モモコさん
「買い手目線で算出する」って、どういうこと?
フドー先生
その前にまず、査定価格はどのように算出されるのかを説明しよう。

取引事例比較法による査定

査定価格を算出する際に用いられる一般的な方法は、取引事例比較法 ?です。

取引事例比較法は、過去の取引事例を参考にして売りたい物件の価値を導き出す方法です。

おもに、

  • 眺望
  • 方角
  • 間取り
  • 設備
  • 駅からの距離
  • マンションのグレード
  • 築年数
  • 時点修正 ?

などのデータをもとに、過去の取引事例と売りたい不動産を比較し、いくらくらいで売れるかを算出します。

フドー先生
似ている物件の過去の取引事例を参考にすることで、予想しやすくなるんだ。

上記のそれぞれの項目についてポイント化し、その不動産の長所と短所を点数式で評価し、最終的に出された点数をもとに査定価格を導きます。

モモコさん
けっこう細かく分けてポイントをつけていくんだね。

このように取引事例比較法を用いることによっておこなう査定は、論理的な査定方法であり、システム化することができるので効率的です。

また、数値化できるので査定の根拠を説明しやすくなります。

買い手目線や気持ちを加味して算出する

取引事例比較法をおこなうことにより、その不動産の価値を理論的に把握することができますが、それだけで査定価格を正しく導くのは不十分といえます。

ではどうするのかというと、「買い手の目線や気持ち」を意識した査定を付け加える必要があります。

査定をおこなううえで、理論より大切なものが「買い手の目線や気持ち」です。理論だけでは本当の不動産の価値を導くことはできないのです。

フドー先生
その不動産を買うのは人間だからね。あくまでも人の気持ちを考えないといけないんだ。

買い手の立場に立ち、目線や気持ちを意識することによって、より精度の高い査定ができるようになります。

モモコさん
なるほど。で、買い手目線での査定って、具体的にはどんな方法なの?
フドー先生
それは「現在の市場を見る」査定方法だよ。

現在の市場を見ることによって買い主目線に立てる

「現在、市場で競合となる売り出し中の物件が、どのくらいあるのか?」を見るということが、買い手の目線に立つことにつながります。

たとえば、取引事例比較法によって2000万円という査定価格が算出されたとしましょう。

過去の同類の物件の取引事例から見て、「この物件は現在なら2000万円の価格をつけるのが妥当だ」という判断をしたということですね。

でも、もしそのエリアで、他に同じような物件が1500万円でたくさん売り出されていたとしたら、買主はどう感じるでしょうか?

モモコさん
「2000万円は高すぎる」と思うだろうね。

買い主は他の物件の情報もチェックするし、比較検討しているわけです。なので、いくら取引事例比較法によって「論理的に」正しく査定価格を出したとしても、他の物件と比べて高ければ「高い」と思われるのです。

逆に、競合となる同じような物件の売り出しがそのエリアに少なければ、買主にとって2000万円という価格は高いとは感じられないでしょう。

モモコさん
そうか、比較する対象がないもんね。

それどころか、2300万円でも2500万円でも高値感を与えにくくなるでしょう。このような状況では、多少高めの値段で売り出しても、成約できる可能性は出てくるのです。

買主は、あなたの物件だけを見ているのではないのです。「市場全体の中において、自分の物件が買主の目にどのように映るか?」この視点が重要なのです。

フドー先生
これが「買主の目線」に立っておこなう査定だよ。

過去の取引事例やデータに捉われすぎてはいけない

このように、「現在の市場」を意識することにより、買い主の目線に立って考えることができるようになります。

取引事例比較法に代表される「論理的な査定」の多くが、過去のデータを参考にして算出しています。

過去のデータをもとに論理的に査定をすることも大事ですが、そこに捉われすぎると「買主目線」を見失ってしまいます。

フドー先生
買主は過去の市場ではなく、現在の市場を見ているからね。

購入を決定するときは感情が介入している

不動産に限らず、買い物をするときは理屈だけで考えないはずです。購買を決定するときには感情が介入するものです。

他の商品と比べて値段が高いと「損をするのでは・・・」と思いますよね。たとえ、それが論理的に適正につけられた価格であっても。

市場に並んでいる商品を比較検討して「これならお買い得だ!」と思った時に、購入に踏み切ることのです。

だから「買い手から見て、他の物件と比べた時にどう映るか?」という視点が非常に重要になるのです。

モモコさん
不動産という、高額な買い物ならなおさらだね。

買主目線で査定をおこなっている業者を選ぶ

フドー先生
「買主目線」で査定をおこなうということが、どういうことかわかったかな?
モモコさん
うん。「買主が物件を買おうとするときに、何を見ているのか?」を考えれば、必然だね。

査定価格の精度を高めるためには、「論理的な要素(取引事例比較法)」に加え、「買い手目線の要素」の両方が必要になってきます。

業者選びをする際には、そのような視点に基づいて査定をおこなっているかどうかをチェックするようにしましょう。

まとめ

  • 査定価格の根拠を聞くことによって業者を見極めることができる
  • 「買い手目線」に立って査定をしている業者を選ぶ
  • 取引事例比較法のような論理的な査定方法だけでは不十分
  • 買い手の目線や気持ちを意識した査定が必要
  • 「現在の市場を見る」ことによって買い手目線に立った査定ができる
  • 買主は市場全体を見て比較検討して購入する
  • 過去の取引事例やデータに捉われすぎてはいけない
  • 人は理屈だけでなく、感情で購買を決定する
  • 「論理的な要素」「買い手目線の要素」の両方で査定している業者を選ぶ
不動産査定(ふどうさんさてい)

その物件が「いくらで売れるか」を不動産業者に予想してもらうことです。

物件のスペックや状態、過去の取引事例や市場の動きを参考にして算出します。

不動産査定の方法には、机上査定訪問査定の2種類があります。

不動産査定をおこなって算出した価格、つまり「いくらで売れるか」を予想した価格を査定価格といいます。

「不動産査定」の詳細を見る
査定価格(さていかかく)

不動産会社が物件に対して「これぐらいで売れるだろう」と予測する価格です。

不動産査定をおこなうことによって算出されます。売り出し価格を決めるためのベースになるので、非常に重要です。

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媒介契約(ばいかいけいやく)

依頼主(売主)が「物件を売るお手伝いをしてください」とお金を払い、仲介業者との間で結ぶ契約のことです。

媒介契約には、一般媒介契約専任媒介契約専属専任媒介契約の3種類があります。



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取引事例比較法(とりひきじれいひかくほう)

不動産査定をおこなう手法の一つです。

「売りたい不動産と同じような不動産」の過去の取引事例と比較することで、「売りたい不動産」の価格を査定する方法です。

「取引事例比較法」の詳細を見る
時点修正(じてんしゅうせい)

過去の取引事例を参考にして査定価格を算出する際に、時期の違いを考慮して修正することです。

同じ物件でも時期が違えば相場や市場の動きが変化し、結果的に売れる価格も変わります。

時点修正をおこなうことにより、査定価格の精度を高めることができるようになります。

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