離婚に伴って家を売る場合、「名義変更」をおこなう局面に出くわすでしょう。
ここで多くの人が陥ってしまうのが、「不動産の名義」と「住宅ローンの名義」を混同してしまうということです。
ひとくちに「名義」といっても、この二つはまったくの別物です。
ここでは、「不動産の名義」と「住宅ローンの名義」の違いや、それぞれの取り扱いにおける注意点について見ていきましょう。
目次
「不動産の名義」と「住宅ローンの名義」の違い
まず、「不動産の名義」と「住宅ローンの名義」の違いについて、ざっくりと触れておきましょう。
「不動産の名義」は、「その不動産の持ち主」を表したものです。
一方、「住宅ローンの名義」は、「その不動産を購入するためにローンを組んだ人」のことです。
「不動産の名義」は法務局に登録しているのに対し、「住宅ローンの名義」は金融機関と結ぶ契約です。
分かりやすく説明してくれているサイトが少ない
不動産売却や債務整理に関するサイトなどでは「名義」という言葉がよく使われていますよね。
しかし、それが「不動産の名義」なのか「住宅ローンの名義」なのかをわかりやすく説明してくれているサイトは少ないです。
だから一緒くたになってしまい、混乱を招くことになるのです。
「名義」という言葉が出てきたら、それが不動産のものなのか住宅ローンのものなのか、見極めるようにしましょう。
住宅ローンの負担割合と家の持ち分は別モノ
よくある勘違いが、「住宅ローンを組んだ人の名義がそのまま不動産の名義になる」というものです。
たとえば、「夫が単独で住宅ローンを組んだら、その家は夫名義になる」と思われがちですが、必ずしもそうというわけではありません。
たしかに、
- 夫単独の住宅ローンの場合、家の持分も夫のみ
- 「夫7:妻3」でペアローンを組んだ場合、家の持分も「夫7:妻3」
というように、住宅ローンの負担割合に応じて家の持分割合を決めることが多いです。
ですが、必ずしもそうとは限らないということを知っておきましょう。
割合が違うと問題が起こる可能性がある
「住宅ローンの名義」と「不動産の持ち分」をなぜ同じ割合にすることが多いのかというと、割合が異なっているとさまざまな問題が起こる可能性があるからです。
滞りなく返済ができている間は問題にならないのですが、離婚をして財産分与をするときなどに問題が起こるのです。
なので、「住宅ローンの名義」と「家の持ち分」の割合を同じにすることが多いのです。
名義変更についての違い
「不動産の名義」と「住宅ローンの名義」の違いで特に注意しないといけないのは、「名義変更」についてです。
「不動産の名義」は比較的容易に変更できますが、「住宅ローンの名義」は簡単に変更できません。
「不動産の名義」と「住宅ローンの名義」を混同することによって、「住宅ローンの名義」も簡単に変更できると考えてしまう人もいるでしょう。
ここで、「不動産の名義」と「住宅ローンの名義」を変更するための方法や条件について見ていきましょう。
不動産の名義は変更することができる
「不動産の名義」は法的には「所有権」といいます。
家を買ったときに、法務局に「この家は私のモノです」と申請することにより、法務局の登記簿に所有権が記録されているのです。
不動産の名義、すなわち所有権を変更するためには、登録したときと同様に法務局に申請することで可能です。
登記簿に記載されている所有権を書き換えることで、別の人に移すことができるのです。 この手続きを所有権移転登記といいます。
住宅ローンの名義は変更することができない
一方、「住宅ローンの名義」は「不動産の名義」のように、簡単に変更することができません。
たとえば、夫名義で住宅ローンを組んで購入した家を妻が住むことになる場合、夫名義から妻名義に切り替えたいと思う場合があると思います。
ですが、「離婚するから住宅ローンの名義を変更してくれ」というわけにはいかないのです。
金融機関からすると、お金を貸した相手が結婚してようが離婚してようが関係のないことなので、離婚を理由に名義を変更するわけにはいかないのです。
- 経済的信用が高い職業についている
- 資金力のある保証人を立てられる
といったような条件を満たしている場合は、金融機関がローンの組み直しに同意してくれる可能性が高くなります。
詳細についてはこちらの記事をごらんください。

住宅ローンの名義人が住まないと契約違反に
不動産の名義は法務局に申請することで容易に変更することができますが、ここで注意が必要です。
それは、「住宅ローンは本人が住むということを条件としている」ということです。
金融機関は、「本人が住む」という場合にのみお金を融資します。
つまり、夫がローンの名義人なら、夫はその家に住まなければいけないのです。
もし、「夫の「不動産の名義」を妻に移した」ことや、離婚したことが金融機関に知られると、契約違反として一括返済を求められることがあります。