離婚をすることになると、夫婦でさまざまなことを話し合わないといけません。
親権、子供の養育費、慰謝料、財産分与・・・
中でも、もっとも揉めるのが「家の問題」です。
もし賃貸に住んでいるのなら解約するだけなので問題ありませんが、持ち家の場合は「家をどうするか」ということを考えないといけません。
もうこんな家はさっさと処分したい。でもローンが残ってるし、売れるのかな? | ![]() |
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ローンが残ってるから、やっぱり離婚してもどちらかが住み続けないといけないのかな? |
住宅ローンは簡単に分けることができないため、家の財産分与は難しく夫婦で揉める大きな原因になります。
- 住宅ローンが残っている家を持っている夫婦が離婚することにより、どのような問題が起こる?
- トラブルを未然に防ぐために、どう対処すればいい?
- 売るか住み続けるか、どっちを選ぶべき?その判断の基準は?
ここでは、「離婚と家」の問題について説明します。
「住宅ローンをどのような形態で契約しているか」によって、それぞれ起り得るリスクが異なります。
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目次
「離婚と家」の基礎知識
「離婚と家」の本題に入る前に、内容をより深く理解できるように最低限の知識をつけておきましょう。
「不動産の名義」は法務局に申請するものであり、「住宅ローンの名義」は金融機関と契約するものです。
離婚によって家を売る場合、よく「名義」という言葉を使いますが、この二つを混同してしまわないように注意しましょう。
夫婦でお互いに住宅ローンを組む場合、「住宅ローンの割合」と「不動産の持分の割合」を揃えることが多いですが、必ずしもそうであるとは限りません。
住宅ローンを「夫7:妻3」の割合で組んだとしても、家の持ち分が「夫5:妻5」ということもありえます。
金融機関の承諾を得る必要があります。
「離婚と家」にまつわる問題
では、本題に入りましょう。
家を持っている夫婦が離婚をするとき、家のことについてまず考えるのが
- 家を売る
- 住み続ける
のどちらを選ぶべきか?ということではないでしょうか。
「この際、売却してキレイさっぱり清算してしまいたい!」「まだたっぷりと住宅ローンが残っている状態で売ることはできる?」
「夫か妻の、どちらかが残って住み続けるべき?」
どちらを選択するべきかの結論を出す前に、まずは「家を売る」場合と「住み続ける」場合とでは、それぞれどのような問題が起こるのかを見ていきましょう。
「家を売る」場合に起こる問題
まず、「家を売る」といってもカンタンに売れるわけではありません。
ただでさえ、離婚には多くの時間と労力を使うことになります。家を売却することにより、拍車をかけて忙しくなってしまいます。
いざ家を売り出したとしても、必ず売れるとは限りません。
買い手が現れて初めて売買が成立するので、欲しい人がいなければ売れ残ってしまう恐れもあります。
家を売るためにはローンを一括返済する必要があります。
つまり、ローンを返済できるほどの価格で家を売らないといけません。
もし買い手が現れて売れたとしても、高く売れるとは限りません。
「住み続ける」場合に起こる問題
たとえば「夫がローンを組んで妻が連帯保証人 ?になっている」場合、夫の返済が滞れば妻が代わりに支払わないといけません。
離婚しても連帯保証人の関係は解消されないため、別々の暮らしをしている元配偶者の尻を拭く日が突然やってくる可能性があります。
たとえば「夫名義のローンを組んでいる家に妻が住み続け、出て行った夫が今まで通り支払い続ける」場合。
夫がローンの返済を滞らせたら、家を差し押さえられて競売にかけられることになります。
「夫名義でローンを組んでいる家に妻が住み続ける」ことになった場合。
ローン名義を夫から妻に移そうとしても、原則として無理です。名義を移すためにはローンを完済する必要があります。
同様に、夫婦でのペアローンをどちらかの単独のローンに変更することもできません。
「家の名義が共有名義」の場合、家を売却するには両者の承諾が必要になります。
もし離婚後も住み続けてきた持ち家を売りたくなっても、自分の意向だけでは売ることができません。
もし相方と音信不通になった場合は売却が不可能になってしまいます。
家を売るべきか?住み続けるべきか?
- 売却に時間と労力を割かないといけない
- 家が売れるとは限らない
- 家が高く売れないとローンを返済できない
- 関係が切れたと思っていた家のローンを請求される
- いきなり家を差し押さえられる
- ローンを完済しないと名義変更できない
- 売却したくなったときに売却できない
さて、以上の問題を踏まえたうえで、
- 家を売る
- 住み続ける
の、どちらを選ぶべきなのでしょうか?
答えは「家を売る」です。
住み続けると自己破産につながるリスクがある
「住み続ける」ことにより、自己破産につながるリスクがあるからです。
住宅ローンの残債があるまま離婚すると、一気に自己破産に陥る恐れがあります。
さまざまな問題によってローン返済に支障をきたし、家を差し押さえられて競売にかけられたることによって、自己破産に追い詰められることになります。
とは言っても、状況は人それぞれ。離婚する夫婦にとって「家を売る」という選択肢が絶対的に正しいというわけではありません。
単純に「リスクの大きさ」で比較すると、圧倒的に「住み続ける」ほうが勝ってしまう、ということです。
家を売らずに離婚すると取り返しがつかない事態に
後述しますが、不動産会社選びさえ間違えなければ、売却してローンを返済することは可能です。
家を売るときに起こる、
- 売却に時間と労力を割かないといけない
- 家が売れるとは限らない
- 家が高く売れないとローンを返済できない
という問題は、「ふさわしい不動産会社を選べば」どれも解決できることです。
一方、住み続けることを選ぶことにより、ローンまみれになったあげく自己破産・・・となってしまえば、もうどうしようもありません。
離婚する前に「家を売る」のがベスト
そして、家を売るにしても「離婚する前に売る」ことが重要です。
「とりあえず離婚問題を先に片付けてから家を売ろう」とすると、のちのちに面倒なトラブルに巻き込まれる可能性が高くなるのです。
先述の通り、家の名義が共有名義になっている場合は、双方の同意がないと売却ができません。
共有名義を組んだ相手と連絡がつかなくなってしまうと、売ることができなくなってしまいます。
なので、売却するなら相手と連絡がつくうちがチャンスです。
不動産の価値は、時間が経てば経つほどどんどん下がっていきます。そのような理由からも、早めに売却をおこなうほうが得策です。
家を売ったお金で住宅ローンの残りを返済できるか計算する
「家を売る」を選択するためには、「家を売ったお金で住宅ローンの残りを返済できる」ことが前提になります。
なので、まずはここを確認する必要があります。
- 家が売れる値段を調べる
- 住宅ローンの残債を調べる
1.家が売れる値段を調べる
まず、「家がいくらくらいで売れるのか」を調べましょう。
家が売れる値段を調べる方法はいくつかありますが、手っ取り早くて確実な方法が「複数の不動産会社に査定 ?をしてもらう」というものです。
査定価格の精度を高めるには、3〜4社に査定してもらって平均を割り出すことが大事です。
たしかに、離婚するとなるとやらないといけないことが多くてバタバタしますよね。
- 親権について
- 慰謝料について
- 財産分与について
また、協議離婚をするのか裁判離婚にするのかなど、決めないといけないことだらけです。
そんなときに便利なのが、一括査定サービスです。ネットで簡単に複数の不動産会社に査定を依頼できるので、時間も手間も大幅に省くことができます。しかも無料です。
一括査定サービスであればどれを利用しても構いませんが、当ブログではイエイをオススメしています。
イエイは他の一括査定サービスに比べ、
- サポート体制が充実している
- 査定を依頼できる不動産会社の数が多い
- 質の悪い不動産会社を排除する意識が高い
という特徴があるので、安心して利用できます。
2.住宅ローンの残債を調べる
次に、「住宅ローンの残債がいくらなのか」「住宅ローンの名義」を調べましょう。
住宅ローンを組んでいる金融機関に問い合わせることで確認することができます。
「家が売れる価格(査定価格)」から「住宅ローンの残債」を引いて、プラスになれば家を売ることができるということになります。
査定価格はあくまでも予想の価格なので、結局は売れるまではわかりません。もしかすると査定価格より高く売れるかもしれません。
また、査定価格があまりにも低すぎてどう考えても住宅ローンの残債に届かないようであれば、任意売却 ?を利用するという手段もあります。
住宅ローンの名義別に見る「家と離婚」
ここでは、住宅ローンの名義の状態別に、
- 家を売る
- 夫が住み続ける
- 妻が住み続ける
の、どれを選択すればベストなのかを見ていきましょう。
■夫:主債務者 ■妻:連帯保証人
夫の名義で住宅ローンを組み、妻が連帯保証人になっているケースです。
家を売る | 問題なし |
---|---|
夫が住み続ける | 妻にリスクあり |
妻が住み続ける | 妻にリスクあり |
売ってしまうのがもっとも無難です。ただし、家を売ったお金で住宅ローンを返済する必要があります。
返済することさえできれば妻の連帯保証人 ?の関係も解消されるので、トラブルに巻き込まれる心配がありません。
妻にとってはリスク大です。
離婚して家を離れ、別々の生活を送ることになったとしても、「夫の連帯保証人である」という関係は解消されません。
もし、家に住み続けている元夫が何らかの事情で住宅ローンを返済できなくなったとき、連帯保証人である元妻に支払いの催告が届きます。
これも妻にとってリスクが大きいです。
家を離れていった夫が住宅ローンを支払い続けてくれるので、妻としては「タダで住める」という状態になります。
ですが、元夫が返済し続けてくれるという保証はありません。元夫の返済が滞ると、連帯保証人である元妻が代わりに返済をする必要が生じます。
■夫:債務者 ■妻:債務なし
夫の名義で住宅ローンを組み、妻は連帯保証人にも連帯債務者にもなっていないケースです。
家を売る | 問題なし |
---|---|
夫が住み続ける | 問題なし |
妻が住み続ける | 妻にリスクあり |
これも問題なしです。家に残った夫が、これまで通り住宅ローンを支払い続けるだけです。
これは妻にとってリスクがあります。
別居している夫が住宅ローンを支払い続けてくれるので、妻としては「お金を払わずに住める」という状態です。
ところが、もし夫が住宅ローンを返済できなくなったときには、競売にかけられてしまう恐れがあります。
■夫:債務者 ■妻:債務者(ペアローン)
夫婦それぞれが別個の住宅ローンを契約する、いわゆる「ペアローン」です。
ペアローンでは、夫婦それぞれがお互いの連帯保証人 ?になるため、注意が必要です。
家を売る | 問題なし |
---|---|
夫が住み続ける | 夫婦ともにリスクあり |
妻が住み続ける | 夫婦ともにリスクあり |
お互いが連帯保証人になるため、離婚して家を出ていった妻の支払いが滞ったとき、夫に返済の義務が生じます。
夫は「自分の返済分」プラス「妻の分」まで返済することになってしまいます。
また、住み続けている夫の支払いが滞ったときには、連帯保証人である妻のもとに催促がきます。
妻は「自分の返済分」プラス「夫の分」まで返済することになってしまいます。
「夫が住み続ける場合」と同様です。妻が住み続ける場合も、夫婦ともにリスクがあります。
離婚で出ていった夫が住宅ローンを支払えなくなったとき、連帯保証人である妻が返済することになります。
住み続けている妻が住宅ローンを支払えなくなったとき、連帯保証人である夫が返済することになります。
家を売らずに離婚すると起こるトラブルの具体例
ここで、家を売らずに離婚するとどのようなトラブルが起こるのかを、ケース別に見ていきましょう。
- 主債務者である夫が家に残るケース
- 連帯保証人である妻が家に残るケース
- 住宅ローンの名義を変更するケース
主債務者である夫が家に残るケース
主債務者である夫が家に残ってローンを支払い続け、妻が出て行くパターン。
注意しなければいけないのは、妻が連帯保証人である場合です。
住宅ローン | 主債務者:夫 連帯保証人:妻 |
---|---|
家の名義 | 夫 |
離婚後の家 | 夫が住み続ける |
離婚して「夫とも家とも縁を切れた」と思っていると、ある日突然、家の支払いを請求されることがあります。
夫とは縁を切れても「夫との連帯保証人の関係」は切ることができないのです。
詳細はこちらの記事をごらんください。

連帯保証人である妻が家に残るケース
主債務者である夫が出て行き、連帯保証人である妻が家に残るパターンです。
これがもっとも離婚後にトラブルが起きることが多いようです。
住宅ローン | 主債務者:夫 連帯保証人:妻 |
---|---|
家の名義 | 夫 |
離婚後の家 | 妻が住み続ける |
家に残る妻としては、タダで住めるようなものです。出て行った夫がローンを支払ってくれているのですから。
しかし、その夫に何らかの問題が起きて住宅ローンを返済できなくなった場合、その肩代わりとして妻に請求がきます。これが連帯保証人の恐ろしさです。
詳細はこちらの記事をごらんください。

住宅ローンの名義を変更するケース
「家に残るほうがローンを支払うことにしたい」などの理由により、住宅ローンの名義を移そうとするケースです。
住宅ローン | 債務者:夫 |
---|---|
家の名義 | 夫 |
離婚後の家 | 住宅ローンの名義を夫から妻に変更し、妻が住み続ける |
詳細はこちらの記事をごらんください。

「離婚と家」にまつわるQ&A
Q.ローンが残っていても、離婚することはできる?
できます。
が、離婚しても住宅ローンの契約は残ったままです。住宅ローンは金融機関との契約だからです。
離婚しているかどうかなんて、金融機関からしてみれば関係のないことですよね。
なので、契約者は離婚後も住宅ローンを支払い続けることになります。契約者が家を出ていく場合でも、当然支払い続けないといけません。
理想は、離婚する前に家を売却して住宅ローンを返済することです。
Q.オーバーローンの場合は、家を売れない?
任意売却という手段があります。
任意売却を利用すれば、住宅ローンの返済が困難になった人でも家を売却することができます。住宅ローンを残したまま抵当権を外すことができるのです。
ただし、金融機関の同意を得る必要があります。また、普通の売却よりも安い価格での売却になることが多いです。
Q.住宅ローンは財産分与の対象になる?
なります。
財産分与とは、夫婦で財産を半分ずつに分けることです。
お金なら「1000万円あれば500万円ずつ」というふうに分けることができますが、家の場合は半分ずつに分けることができません。
理想は家を現金化し、半分に分けることです。つまり「家を売り、そのお金で住宅ローンを返済し、その余ったお金を夫婦で分けること」です。
これができれば不動産の財産分与は完了です。
Q.離婚したあとに家に住み続けることは可能?
可能です。
- 離婚はしたいが家は手放したくない
- 高く売れそうにないので売るのを諦めている
という人もいるでしょう。
離婚したあとに夫婦のどちらかが住み続け、住宅ローンを返済していくという道はアリです。
ですが、状況によっては大きなトラブルに巻き込まれる可能性があります。
いずれにしても問題が起こる可能性があります。
Q.住宅ローンの名義を変更することはできる?
原則的には無理です。
妻が住み続けることになるので「住宅ローンの名義を夫から妻に移したい」という人もいるでしょう。
しかし、「妻の収入が高い」「保証人を立てられる」などの条件がなければ、金融機関が応じてくれる可能性は極めて低いです。
どうしても妻が住み続けたいのなら、別居している夫に住宅ローンを支払い続けてもらうしかありません。
ですが、もし夫の返済が滞ってしまったときには、競売や強制退去のリスクがあります。