ちょっと、そこの奥さん!
離婚を考えているなら、財産分与のこともキチンと準備しておかないといけませんよ。
特に、家の財産分与。財産の中でも一番大きな額になるでしょ。
家の財産分与のことをキチンと理解していなかったばかりに、離婚したあとに何百万円も損することになってしまうかもしれません。
「家の財産分与、もっと考えておくべきだった・・・!」
と後悔しても遅いですよ。
しかし、この記事で紹介している財産分与の流れやポイントを押さえておけば、トラブルを未然に防ぎ、新生活を華々しくスタートさせることができるでしょう。
- 住宅ローンが残っている家でも財産分与ができること、知っていますか?
- 夫名義の住宅ローンで買った家でも、妻が1/2の財産をいただけること、知っていますか?
知っているか知らないか、それだけの差です。
夫の都合が良いようにコントロールされないためにも、しっかりと財産を分けてもらえるように進めておきましょう。
目次
財産分与の基礎知識
本題に入る前に、財産分与について基本的なコトをおさらいしておきましょう。
財産分与の目的は「経済力が弱いほうの生活を助けるため」
まず財産分与をおこなう目的ですが、これは「離婚した夫婦のうちの経済力が弱いほうの生活を助けるため」です。
多くの場合、経済力が弱いのは妻のほうでしょう。専業主婦で収入がない人が離婚したら、一気に経済的に窮地に陥ってしまいます。
そうならないためにも、夫婦の財産をきっちり分け合いましょう、ということが法律で決められているのです。
財産分与の対象は「結婚生活中に夫婦の協力のもと、築いた財産」
財産分与をおこなうことができる対象は、「結婚生活中に夫婦の協力のもと、築いた財産」です。
これを「共有財産」といいます。
もちろん、家も財産分与の対象になります。ですが、結婚前から持っていた財産や、夫婦の協力や貢献に関係のない財産は財産分与の対象になりません。
これを「特有財産」といいます。
また、親の相続で手に入った不動産に関しても、財産分与の対象になりません。たとえそれが婚姻中の出来事であったとしてもです。
- 夫婦のどちらかが結婚前に所有していた不動産
- 婚姻中に親の相続によって得た不動産
離婚の原因や理由に関係なく、財産分与の対象になる
また、財産分与には離婚の原因や理由は関与しません。離婚の原因をつくった方からも財産分与を請求することができるのです。
たとえば夫の浮気で離婚をすることになった場合でも、夫が妻に対して財産分与の請求をすることができます。
「住宅ローンが残っている家やマンション」も財産分与の対象になる
離婚する人の多くが、その持ち家には住宅ローンが残ったままの状態でしょう。
じつは「住宅ローンが残っている家やマンション」も、財産分与の対象になります。
夫名義の住宅ローンでも財産分与の対象になる
「家を財産分与したいけど、わたしの名義じゃないし・・・」
と思ってあきらめていませんか?
じつは、財産分与には名義は関係ありません。妻が一切お金を出していない夫名義のローンで購入した家でも、きっちりと財産分与することができます。
住宅ローンが残っている家やマンションの財産分与の2つの方法
では、ここから本題に入ります。「住宅ローンが残っている家やマンション」の財産分与をどのようにおこなうのか、ということについて説明していきます。
住宅ローンが残っている家の財産分与をおこなう方法として、
- 家を売って財産分与
- 家を売らずに財産分与
の2つがあります。家を売らない場合は、当然ながら夫婦のどちらかが住み続けることになります。
妻目線で見ると、財産分与で失敗しないためには「家を売って財産分与」を選択することが理想的です。
「家を売らずに財産分与」をおこなうと、離婚後にトラブルが発生する可能性が高くなります。特に、妻が連帯保証人 ?になっている場合などは要注意です。
ですが、「家を売って財産分与」がしやすいかどうかはアンダーローン ?かオーバーローン ?かによって変わってきます。
- 「現在の家の価値」>「住宅ローン残債」:アンダーローン
- 「現在の家の価値」<「住宅ローン残債」:オーバーローン
アンダーローンであるほうが、財産分与で得られる金額が大きくなりますし、家を売りやすくなります。
ここで、アンダーローンの場合とオーバーローンの場合とで、財産分与のやり方にどのような違いがあるのかを説明しておきましょう。
アンダーローンの場合の財産分与
そして余ったお金が財産分与の対象になります。
その金額が1000万円だとすると、夫婦で1/2(原則)に分割して500万円ずつ受け取ることになります。
これがもっともトラブルが起こりにくい、フェアで安全な財産分与の方法になります。
「不動産の価値(今売れる価格)」から「住宅ローン残債」を引いた金額が財産分与の対象になります。
その金額が1000万円だとすると、夫は妻に1/2(原則)の500万円を支払うことになります。
妻が連帯保証人になっている場合は注意が必要です。
「不動産の価値(今売れる価格)」から「住宅ローン残債」を引いた金額が財産分与の対象になります。
その金額が1000万円だとすると、妻は夫に1/2(原則)の500万円を支払うことになります。
妻が住み続ける場合は、妻が連帯保証人になっていなくても注意が必要です。
オーバーローンの場合の財産分与
住宅ローンが残るのでマイナスの財産になり、財産分与をおこなうには他の財産との合計がプラスである必要があります。
妻が連帯保証人になっている場合は注意が必要です。
妻が住み続け、家を出て行った夫がこれまで通り住宅ローンを支払い続けます。
住宅ローンが残るのでマイナスの財産になり、財産分与をおこなうには他の財産との合計がプラスである必要があります。
妻が住み続ける場合は、妻が連帯保証人になっていなくても注意が必要です。
まずは不動産の状況を確認しよう
あなたの家を売ろうとしたときにアンダーローン ?になるのかオーバーローン ?になるのかを把握するために、まずは以下の不動産の情報を確認しましょう。
- 不動産の名義
- 不動産の価値(価額)
- 住宅ローンの契約内容
- 住宅ローンの残債
順に説明していきます。
1.不動産の名義を確認する
「その家が誰の名義になっているか(所有者名義)」を確認しましょう。
夫の単独名義なのか、夫婦でのなのかによって、今後の流れが変わってきます。
不動産の名義は法務局で登記簿藤本を取得することで確認できます。
(不動産とローンの名義のちがい、注意)
2.不動産の価値(価額)を調べる
「現在の家の価値」つまり、今売ったらいくらになるのかを調べましょう。
不動産会社によって査定の仕方や精度に差があるので、複数の不動産会社に査定をしてもらって平均を取るとよいでしょう。
もし何社もの不動産会社に足を運ぶのが面倒であれば、ネットで利用できる一括査定サービスを利用することをオススメします。
家の情報を入力するだけで数社に査定をしてもらうことができて便利です。
3.住宅ローンの契約内容と残債を確認する
住宅ローンをどのように契約しているのか、残債があといくらあるのかを調べましょう。住宅ローンを契約している金融機関に問い合わせることで確認できます。
住宅ローンの契約は、以下の4パターンのいずれかに当てはまることが多いです。
夫 | 妻 |
---|---|
主債務者 | 連帯保証人 |
夫 | 妻 |
---|---|
主債務者 | 連帯債務者 |
夫 | 妻 |
---|---|
債務者 連帯保証人 |
債務者 連帯保証人 |
夫 | 妻 |
---|---|
債務者 | 債務なし |
売却益で住宅ローンを返済できるか計算する
さて、これで財産分与に必要な不動産の情報が揃いましたね。
次はいよいよアンダーローン ?になるのかオーバーローン ?になるのかの計算をしましょう。
- 「現在の家の価値」>「住宅ローン残債」:アンダーローン
- 「現在の家の価値」<「住宅ローン残債」:オーバーローン
「不動産の価値(今売れる価格)」から「住宅ローン残債」を引いてプラスになる、つまり売却したお金で住宅ローン残債を返済できるならアンダーローン。
もし「住宅ローン残債」のほうが多くてマイナスになったら、売却したお金で住宅ローン残債を返済できないということであり、オーバーローンになります。
売却するか住み続けるかを決める
あなたの家がアンダーローン ?かオーバーローン ?かがわかりましたか?
アンダーローンとオーバーローンのどちらでも、
- 家を売って財産分与
- 家を売らずに財産分与
の選択をすることができます。が、それぞれに注意するべきポイントが違ってきます。
それぞれにどういうリスクがあるのかを把握したうえで、あなたにとってふさわしい財産分与の方法を選んでください。
アンダーローン(残債が残らない)の場合
「現在の家の価値」が「住宅ローン残債」を上回るアンダーローンの状態では、「家を売却して得られたお金で住宅ローンを完済できる」ということになります。
このアンダーローンの状態のとき、財産分与の方法は3種類あります。
- 家を売って財産分与をおこなう
- 夫が住み続けて財産分与をおこなう
- 妻が住み続けて財産分与をおこなう
アンダーローンで家を売って財産分与をおこなう
まず、家を売って財産分与をおこなう場合です。
家を売却して現金化し、そのお金で住宅ローンを返済します。それでもお金が余ったら、それを半分ずつ分割することで財産分与をおこないます。
たとえば、家の価値が3000万円(今、3000万円で売れる)で、住宅ローンの残債が2000万円あったとしましょう。
この場合は、家を売って住宅ローンを完済することによって(3000万-2000万)で手元に1000万円が残ることになります。
この1000万円が「その家の価値」ということになり、財産分与の対象になります。原則1/2の割合なので、夫婦で500万円ずつ受け取ることになります。
アンダーローンで夫が住み続けて財産分与をおこなう
次に、家を売らずに夫が住み続ける場合です。
アンダーローンの場合であっても、必ずしも家を売らなければいけないわけではありません。
愛着があるなどの理由で手放したくない場合は、離婚した夫婦のいずれかが住み続けることも可能です。
家の価値が3000万円(今、3000万円で売れる)で、住宅ローンの残債が2000万円あった場合、その家の価値は1000万円ということになります。
夫が住み続ける場合、「1000万円の価値のある家」に夫が一人で住むことになります。
本来であれば、現金化すると500万円ずつ分け合うことになるため、夫は妻に500万円を支払うことになります。
夫としては500万円を失うことになりますが、家を売れば1000万円が手に入るので(1000万円の価値がある)、手元に500万円が残ることになります。
なお、妻が連帯保証人になっている場合にはリスクがつきまといます。(ジャンプ)
アンダーローンで妻が住み続けて財産分与をおこなう
アンダーローンで妻が住み続ける場合です。
同じく、家の価値が3000万円(今、3000万円で売れる)で、住宅ローンの残債が2000万円あった場合で計算すると、その家の価値は1000万円ということになります。
妻が住み続ける場合、「1000万円の価値のある家」に妻が一人で住むことになります。
本来であれば、現金化すると500万円ずつ分け合うことになるため、妻は夫に500万円を支払うことになります。
たしかに夫に渡すための資金を調達するのは厳しいですが、もし財産分与をしたあとに1100万円で売れたとしたら、100万円の儲けが出るということになります。
ですが高く売れる保証はありませんし、リスクがあります。可能なら離婚前に家を売却して現金化するべきでしょう。
オーバーローン(残債が残る)の場合
続いて、オーバーローンの状態の財産分与についてです。
「現在の家の価値」が「住宅ローン残債」を下回るオーバーローンの状態では、家を売却して得られたお金で住宅ローンを完済できません。
住宅ローンを完済できない状態だと、家を売ることもできません(後述の任意売却 ?や住み替えローン ?の場合を除く)。
たとえば現在の家の価値が1500万円(今、1500万円で売れる)で、住宅ローン残債が2000万円の場合、任意売却で売却したとしても、売却で得た1500万円はすべてローンの返済に充てられます。
つまり、家を売っても手元には一切お金が残りません。それどころか、500万円のローンが残る状態です。
オーバーローンの場合の財産分与は、「他の財産分与の対象となるモノ」と差し引きしたものが、プラスになるかマイナスになるかで違ってきます。
財産分与の合計がプラスの場合
家以外にも車や預貯金など、「財産分与の対象になるモノ」がある場合は、住宅ローンがマイナス(負債)になったとしても、その他のプラスの財産分与と差し引きをして計算することになります。
たとえば、住宅ローンが500万円残ってしまったとしても、他の財産分与の合計が800万円あったとすると、(-500万+800万)で300万円が残ります。
この300万円が、財産分与の対象となるのです。
財産分与の合計がマイナスの場合
では、次は財産分与の合計がマイナスになる場合です。
住宅ローンの残債が500万円あって、他の財産分与の総計が300万円しかなかったとすると、(-500万+300万)で200万円のマイナスということになります。
0円より少ないマイナスなので「財産がない」ということになり、財産分与をおこなうことができません。
また、家以外に「財産分与の対象となるモノ」がない場合も、同様です。
この場合は住宅ローン残債の500万円が財産分与の総計になるので、「財産がない」ということになり、財産分与はできません。
こうなってしまうと、ローン残債の500万円を夫婦で半分ずつ分け合うということもできません。
ローン名義人もそのまま、連帯保証人の関係もそのままで、今までと変わらず責任を負うことになります。
オーバーローンでも家を売るなら任意売却
任意売却
住宅ローンが残っている家に住み続ける際の注意
アンダーローン・オーバーローンを問わず、「ローンが残っている家に住み続ける」ということにはリスクがつきまといます。
妻が住み続ける・夫がローン名義人の場合
夫が住宅ローンの名義人で、離婚後は妻が住む場合。
出て行った元夫が、元妻が住んでいる家の住宅ローンを支払い続けるということはよくあります。
たしかに、そのような嬉しい状況に見えますが、恐ろしいのは夫のローン支払いが滞ったときです。
夫がずっと住宅ローンを支払い続けてくれる保証はありません。経済的な理由で支払いが不可能になるかもしれませんし、病気や事故が理由で支払えなくなるかもしれません。
もしそうなった場合、連帯保証人になっていれば代わりに支払う義務を負いますし、連帯保証人になっていなくても競売にかけられてしまう恐れがあります。
夫が住み続ける・夫がローン名義人の場合
住宅ローンの名義人である夫が、離婚後もその家に住み続ける場合。
この状況は特に問題がありませんが、注意しないといけないのは「妻が連帯保証人になっている場合」です。
たとえ離婚したとしても、連帯保証人の関係は解消されません。
仮に元夫が何らかの事情で住宅ローンの支払いができなくなったとき、連帯保証人である元妻のもとに催促が来る恐れがあります。
「連帯保証人の関係を解消する」という手段もありますが、代わりの保証人を立てるなどしなければ金融機関が応じてくれず、ハードルは高いです。
ローン残債をそのままにするべきではない
このように、離婚後に住宅ローンが残っている家に住み続けるのは危険です。
アンダーローンの場合は家を売却して住宅ローンを返済し、余ったお金を財産分与。
オーバーローンの場合は住み替えローンや任意売却を利用するなどして、離婚する前に住宅ローンを清算してしまったほうが賢明でしょう。
住宅ローンがない家やマンションを財産分与する方法
家はひとつしかありませんし、簡単に分割できそうにありませんよね。
ここでは一旦、「住宅ローンを返済済み」の家の財産分与について説明しましょう。
売却して現金化したものを分割する
家の名義(所有権)を移す