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一括査定では一般媒介契約を選択できない?
「ウリリン」と「一括査定サイト」との比較において、次のような記述があります。
(一括査定サイトは)
「通常、査定額や相性、その他の条件などを比べて最も良い一社に依頼します(専任媒介契約)」
(それに対し、ウリリンでは)
「複数社に売却依頼(一般媒介契約)ができます」
あたかも、「一括査定サイトに依頼すると自動的に専任媒介契約になる」というような書き方をされていますが、実際はどうなのでしょうか。
一括査定サイト経由で不動産会社と媒介契約を結ぶ際にも、媒介契約を選択することは可能です。
もちろん、一般媒介契約を希望なら、それも可能です。
ウリリンのサイトの記述は、読む人に「ウリリンを利用したほうが、一般媒介契約を選択できるのでお得」といったような誤解を与える恐れがあると言えます。
一般媒介契約は誰にとっても有効か?
「一般媒介契約を選択できるのが大きなメリット」であるかのような謳い方をしていますが、そもそも、一般倍契約を結ぶことが本当にユーザー(売主)にとって正しいのでしょうか?
ハッキリ言って、これはケースバイケースです。
家の状態、エリアの人気、早く売りたいか高く売りたいか、業者に任せたいか自分も関わりたいか・・・
これらのような状況や希望により、一般媒介契約を選んだほうがいい人もいるし、専任媒介契約や専属専任媒介契約を選んだほうがいい人もいます。
人や家によって最適な売り方ができるように、3つの媒介契約の選択肢があるのです。
決して、一般媒介契約は「どんな人にでも当てはまる万能な売り方」というわけではありません。
一般媒介契約で競争させることができる物件は限られている
ウリリンのサイトにも同様のことが書かれていますが、たしかに複数の会社に売却を依頼することによって、競争させることができます。
ただし、どんな物件でも競争されられるわけではありません。
不動産会社間での競争を期待できるのは、おもに「人気物件」や「人気のエリア」の場合に限られます。
人気物件は競争させることができる
不動産会社同士で競争が起きるということは、どんどんと価格が上がっていくことになります。
A社「うちなら3000万円で売却できます!」
B社「当社には「3500万円で購入する」という買主さんがいます!」
C社「3800万円まで値上げしても売れるでしょう!」
このように、各社が魅力的な価格を提示し、売主に対してアピールしてきます。
ところが、このような現象が起きるのは、「高くても買いたい」と買主が思っている場合だけなのです。
買主の立場になって考えてみましょう。人気の物件だったり希少価値のある物件だと、高いお金を支払ってでも買いたいと思うのではないでしょうか?
「なんとしてもこの街に住みたい」と虎視眈々とエリアを絞って空き物件を狙っている人がたくさんいれば、売り出された途端に「今しか買うチャンスがない」となり、大幅に値上げをされても買うでしょう。
このように、「値上げをしても売れる=人気がある(需要がある)」ということが言えるのです。
人気のない物件は競争させられない
もし、これが人気のない家や人気のないエリアならどうでしょうか。
欲しいと思っている人が少ない家を売るためには、基本的に値段を下げていく方法をとることになります。
買主からすると、値下げによって「これだけ値段が安いなら、この家でもいいか」という感じになり、買ってもらえるチャンスが増えます。
このような市場では、不動産会社の間で競争が起きません。競争によって値段を上げていっても、売れる見込みがないからです。
買い手の間で競争が起きないような家は、不動産会社の間でも競争を起こせないのです。
専任媒介契約を結ぶと囲い込みをされる?
ウリリンのページには
「専任媒介契約を結ぶと、不動産会社に売却活動の実権を握られる」
「囲い込み ?をされる恐れがある」
という風に書かれています。
囲い込みとは、不動産会社が自社で仲介を成立させるために、他の不動産会社に情報を回さないようにしたり虚偽の情報を与えることです。
囲い込みによって不動産会社が自社の利益を狙える一方で、売主にとっては売れるまで時間がかかったり売れるチャンスが減ったりと、大きなリスクを負うことになります。
たしかに、専任媒介契約を結ぶと囲い込みをされる恐れはあります。
ただし、売主にとっての脅威は囲い込みだけに限ったことではありません。一般媒介契約にも売主にとってのデメリットがあり、不動産会社に実権を握られる可能性があります。
まず、専任媒介契約における囲い込みのケースを紹介しましょう。
専任媒介契約における囲い込みのケース
「専任媒介契約によって囲い込みがおこなわれる」ケースとしては、おもにREINS上 ?のやりとりにおけるものです。
REINSを経由して、買主側の不動産会社(客付け業者 ?)から問い合わせがあったとしても、嘘をついて問い合わせを拒否します。
不動産会社が利益を大きくするには、どうすればいいか?
それは、買ってくれる人を自社で探すのが一番です。
そうすることによって、売主と買主の両方から仲介手数料 ?を取ることができるからです。
この行為を両手取引 ?といいます。
一般媒介契約におけるデメリット
専任媒介契約を結んで囲い込みをされることは、売主にとって大きなリスクです。
ですが、「物件情報を広く届けられない」という点において、一般媒介契約にも同等のリスクを負うデメリットが存在します。
まず、一般媒介契約にはREINSへの登録義務がありません。
REINSに登録しないということは、全国の不動産会社に物件情報を届けることができなくなってしまいます。
これは売主にとって大きな機会損失であり、売れにくくなる大きな要因となります。
次に、一般媒介契約には売主への報告義務がありません。
「広告をどれぐらい打った」「問い合わせが何件あった」「ポータルサイト ?に登録した」などの活動の内容を、売主へおこなわなくてもいいのです。
なので、売主から催促しない限り、報告をおこなってくれない可能性があります。
報告がなければ、一体どんな活動をおこなっているのか知る術がありません。
熱心に取り組んでくれないかも
専任媒介契約を結ぶ場合は「囲い込みをおこなわないかどうか」
一般媒介契約を結ぶ場合は「REINSに登録してくれるか」
この点をしっかり抑えてチェックすればいいでしょう。
すべては不動産会社次第
大事なのは、媒介契約の種類ではなく「不動産会社の体質」です。
利益優先の不動産会社は、一般媒介契約でも専任媒介契約でも囲い込みを狙うでしょう。
一方、売主の立場に立ってくれる不動産会社はどの契約を結ぼうと、囲い込みをおこなわずに売主の利益の最大化に務めてくれます。
物件のことをよく調べ、売主の要望を聞き、その人にとって最適なプランを提供してくれる不動産会社を選びましょう。