ホームインスペクション(住宅診断)とは、住宅の設計や施工に詳しい専門家が、住宅の劣化状況や欠陥の有無、費用などを診断することです。
おもな目的は、中古住宅を安心して取引できるようにすることです。
アメリカの州によっては、住宅取引の70〜90%がホームインスペクションがおこなわれています。
日本でもリノベーション物件の人気とともにここ数年でホームインスペクションが注目され始め、徐々に普及が進んでいます。
住宅にとっての「かかりつけの医者」といえるでしょう。
目次
ホームインスペクションの目的
ホームインスペクションがおこなわれるシーンはおもに3つあります。
- 中古住宅の売買時
- 新築の入居時や内覧会
- 不動産会社が物件の状況を把握するため
それぞれのシーンごとに、その目的をみていきましょう。
中古住宅の売買時
最近注目されているのは「中古住宅の売買時」でのホームインスペクションです。
この場合のホームインスペクションの目的は、「取引の安心化」です。
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中古住宅を売買するとき、買主や売主はこのような不安を抱いています。
これらの不安を取り除き、安心して取引できるようにするために、ホームインスペクターがアドバイスするのです。
物件の劣化状態や改修の必要性などを明らかにすることで、購入の意思決定や交渉がやりやすくなりますし、引き渡し後のトラブルを防ぐことにもなります。
新築の入居時や内覧会
不動産会社が物件の状況を把握するため
また、不動産会社がお客さんに物件の状況を正しく伝えるために、ホームインスペクションを利用することもあります。
ホームインスペクションの方法
ホームインスペクションは、2013年6月に国土交通省が定めた「既存住宅インスペクション・ガイドライン」に基づいておこなわれます。
住宅診断士などの専門家が目視や計測機器を利用しておこないます。
ただし、ホームインスペクションはあくまでも不具合や劣化状況を「診断」するだけで、「直す」わけではありません。
診断の結果、不具合や直すべき箇所が見つかった場合は、さらに詳細な「二次診断」が必要であることを依頼者に伝えることになります。
ホームインスペクションは、耐震や免震の診断とは別モノになります。
あくまでもホームインスペクションは、経年劣化による不具合や劣化状況を探すものです。
ホームインスペクションの箇所・範囲
ホームインスペクションをおこなう箇所・範囲は、基本的に
- 足場を組まずに移動できる範囲
というふうに定められています。
なので、通常は床下や屋根裏などの「外から見えない部分」の不具合を検査することはできない
のです。
ただし、相談することによってそれらの箇所を診断対象の範囲に追加することは可能です。
ホームインスペクションの費用
- 戸建:7万〜10万円程度
- マンション:5万〜8万円程度
また、住居の面積や築年数によっても変わってきます。面積が広い方が高くなるし、築年数が古い方が高くなります。
さらに、診断してもらう範囲を広げると別途費用が必要になります。
通常は床下や屋根裏はホームインスペクションの範囲ではないのですが、その部分を調査してもらうとなると3〜5万円ほど追加することになります。
ホームインスペクションの費用は誰が支払う?
中古住宅を売買するとき、買主と売主のどちらがホームインスペクションの費用を払うのでしょうか?
その家を買うかどうかの判断材料にするためにホームインスペクションを利用する場合は、買主が支払うことが妥当といえます。
ただし、売主がホームインスペクションを希望した場合は、売主が費用を負担することもあります。
「売る前に売れやすいかどうかを確認することができる」「瑕疵担保責任のリスクを軽減することができる」という、売主にとってのメリットになるからです。
ホームインスペクションの義務化
ホームインスペクションは絶対におこなわなければいけないわけではありません。
ですが、「宅建業者(不動産会社)は消費者に対してホームインスペクションについて説明すること」が、2018年4月から義務づけられることになりました。
宅建業法が改正され、宅建業者は次のことが義務付けられました。
媒介契約において建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載した書面の交付
買主等に対して建物状況調査の結果の概要等を重要事項として説明
売買等の契約の成立時に建物の状況について当事者の双方が確認した事項を記載した書面の交付
媒介契約において建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載した書面の交付
不動産会社が媒介契約を結ぶとき、つまり売主から売却の依頼を受けるときに「ホームインスペクションを実施する業者の斡旋の有無」を記載した書面を渡すことが義務付けられました。
つまり、売主に対して「ホームインスペクションを希望されるなら、業者を紹介しますよ」と促すことになります。
買主等に対して建物状況調査の結果の概要等を重要事項として説明
宅建業者は消費者と売買契約を締結する前に、重要事項説明をおこなう必要があります。
その重要事項説明の内容の中に、
- ホームインスペクションがおこなわれたか否か
- ホームインスペクションがおこなわれた場合は、その結果について
を含めることが義務付けられました。
これによって、買主が買おうとしている物件が
- きちんと診断されたのか?
- どういうところが劣化しているのか?
などといったことを把握することができるようになりました。
売買等の契約の成立時に建物の状況について当事者の双方が確認した事項を記載した書面の交付
「ホームインスペクションの診断結果について、売主と買主の双方が確認した」ということを、売買契約を締結する際に書面に記して売主と買主に渡すことが義務付けられました。
これによって、引き渡し後のトラブルを防ぐことになります。
ホームインスペクション義務化の背景
このように、ホームインスペクションについて不動産会社が説明したり書面を交付することが義務付けられることにより、買主・売主ともに安心して取引ができるようになりました。
そして、その背景には「中古住宅の売買の活性化を図る」という、政府の意図があるのです。
ホームインスペクションを普及させれば中古住宅の質が向上するので、売買する人が増えるだろうという狙いです。