取引事例比較法(とりひきじれいひかくほう)とは、不動産査定 ?をおこなう手法の一つです。
「売りたい不動産と同じような不動産」の過去の取引事例と比較することで、「売りたい不動産」の価格を査定する方法です。
目次
取引事例法の手順
取引事例比較法は、以下の手順でおこなわれます。
- 参考にする取引事例を選ぶ
- 不動産の個別性を比較する
- 時点修正をおこなう
- 事情補正をおこなう
1.参考にする取引事例を選ぶ
まず、参考にする「過去の近隣での取引事例」を選びます。正しく比較をするためには、「売りたい物件」と同じような物件の事例を選ぶことが重要です。
物件の特徴や条件が似ていれば似ているほど、比較がしやすくなります。
- 売りたい物件のエリア:住宅地
- 取引事例のエリア:商業地
- 売りたい物件の築年数:築2年
- 取引事例の築年数:築10年
2.不動産の個別性を比較する
似ている過去の取引事例を選んだら、売りたい物件との「個別性」を比較します。
どれだけ似ている物件を見つけたとしても、多少の違いはあるものです。たとえば、似ている取引事例としてもっとも信用できるのは、「同じマンションの取引事例」です。
同じマンション内で過去に取引された事例があり、かつその事例が1年以内のものであれば、とても比較しやすいです。
ですが、同じマンションの取引事例を選んだとしても、階数の違いや間取りの違い、方位の違いがありますよね。これが「個別性」です。
個別性を比較することで、どちらが優れているのか、劣っているのかを判断し、「売りたい物件」の価格を調整します。
同じマンションで間取りも方位も同じで、階数が違うとしましょう。「取引事例」が5階、「売りたい物件」が8階の場合、「売りたい物件が5%優れている」と判断したとします。
この場合、「取引事例」の価格に5%上乗せさせて査定をすることになります。
3.時点修正をおこなう
物件同士の比較と調整が済んだら、次は「取引がおこなわれた時期の違い」による補正をおこないます。
たとえば、取引事例が1年前のものだとした場合、「1年前」と「現在」での相場や市場の動きを調べます。
1年前よりも現在のほうが相場が3%高くなっているとすると、取引事例の価格に3%上乗せして現在の価格を算出します。
このように「取引がおこなわれた時期の違い」を考慮して価格を補正する作業を時点修正 ?といいます。
4.事情補正をおこなう
正しく査定をするには、時点修正の他にも加味しないといけないことがあります。それが、「売主や買主の事情」です。
たとえば、売主がなんらかの事情により「とにかく早く売りたい」と思った場合、価格を低めに設定して売却せざるを得ません。これを「売り急ぎ」といいます。
この「売り急ぎ」によって低い価格で取引された事例を比較対象としてしまうと、試算価格も低くなってしまい、正しい査定価格を出せなくなります。
正しい査定価格を出すためには、その取引が「売り急ぎによって価格が低下したのだ」ということを考慮する必要があります。
このように「売主や買主の事情」による価格の変動を予測して補正することを事情補正といいます。
取引事例法の2つのポイント
取引事例比較法で査定の精度を高めるためのポイントは、2つあります。
- 類似の取引事例をいかに多く集めることができるか
- どれだけ的確に比較をすることができるか
このポイントをうまく押さえることができれば、かなり精度の高い査定価格を算出することができるでしょう。
逆に言うと、このポイントを外した場合、的外れな査定になってしまう恐れがあります。
取引事例法が困難なケース
次のような場合では、取引事例比較法によって正しい査定価格を求めるのが難しくなります。
- 類似の取引事例の数が少ない
- 時点修正や事情補正が不的確
類似の取引事例の数が少ない
取引事例比較法で精度の高い査定価格を算出するために必要なのは、とにかく「事例の数」です。
同類の物件の過去の取引事例の数が多くないことには、平均値を出すことができません。極端な取引価格を参考にして、査定を誤ってしまう恐れがあります。
事例の数が多ければ多いほど、参考元としての信用度が上がり、査定価格の精度も上がるのです。
時点修正や事情補正が不的確
時点修正や事情補正というものには「絶対的な方程式」というものがなく、感覚的な要素が強いと言えます。
そのため、査定をする業者によって「補正具合」は変わります。その業者の実績の多さや経験からくる勘などに左右されます。
経験が乏しい業者や不慣れな業者にとってはこれらの補正をおこなうのは難しく、査定の精度を高めることも困難と言えます。
まとめ
- 同類の不動産の取引事例を参考にする
- 不動産の個別性を比較する
- 時点修正や事情補正をかけて価格を調整する
- 同類の不動産の数が多いほど査定がしやすい
- 的確に比較をおこなうのは困難なケースもある