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これからはZEHの時代です!家を建てるならぜひZEHにしましょう! |
家を買おうと思っていて、このようにハウスメーカーに言われて「本当にZEHにするべきなの?」と疑問に思っていませんか?
ZEHにしないと時代遅れになる?家の価値がなくなって売れなくなってしまう? | ![]() |
コレって本当なんでしょうか?ZEHにすることのデメリットもあるのでは?
じつは、「ランニングコストが安くなるから」といった安易な理由だけでZEH仕様の家を建ててしまうことにより、大きな損失を被ってしまう可能性があるのです。
ここでは、あまり語られることのないZEHの負の側面(デメリットやリスク)にスポットを当てて、ZEHの是非について考えていきましょう。
ZEHが注目されている背景
ZEHのデメリットを紹介する前に、なぜ現在ZEHが注目されているのか、その背景をみていきましょう。
ZEHとは、エネルギー消費量がプラスマイナスの家
ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、「エネルギー消費量がゼロの家」のことを指します。
「ゼッチ」「ゼロエネルギー住宅」などとも呼ばれます。
当然、人が生活をするうえでエネルギー消費をゼロにするということはできませんよね。
正しく表現すると、「プラスマイナスゼロ」ということです。
消費するエネルギーを上回るほどのエネルギーを発電などで自ら生み出し、エネルギー収支がゼロ以下になる家のことをZEHといいます。
国ががんばってZEHを普及させようとしている
国内のエネルギー消費量のうち、約15%が家庭での消費になっているのです。
政府はこれらの家庭でのエネルギー消費を削減するために、自然エネルギーに移行させたいと考えています。
- 2020年までに、新築住宅の過半数をZEHにする
- 2030年までに、新築住宅の全体をZEHにする
ここでいう「新築住宅」というのは、マンションなどの集合住宅ではなく、戸建のことを指します。
マンションはエネルギー消費に対して屋根の面積が限られるため、ZEHを達成することが困難なのです。
これらの政策を進めるために、政府はZEHの対象住宅に補助金を出しています。
ZEHにするのは大変?4つのデメリット
1.初期投資(イニシャルコスト)が高い
ZEH仕様の家を建てようとすると、ふつうの家を建てるよりもお金がかかってしまいます。
ZEHの基準をクリアするためには断熱・省エネ・創エネの3つを意識した家づくりをする必要があるのですが、そのための設備や工事費がたくさんかかってしまうからです。
家が大きくなれば、もっと費用がかかることになります。床面積が広ければ、それ相応の設備を投資しないとエネルギーの効率化を上げることはできません。
いくら「ランニングコストが優れている」とは言っても、家を建てる時点で資金に余裕がないとZEHにすることは難しいです。
たとえば、創エネに必須なのが太陽光発電。これを住宅メーカーでセットにできれば住宅ローンに組み込むことができますが、太陽光発電システムを別で購入するとなると話は別です。
太陽光発電がないとZEH基準を満たせないといわけではありませんが、もっとも現実的でコストパフォーマンスが良いのが太陽光発電です。
2.発電量が安定しない
太陽光発電で創エネをおこなう場合、どれだけエネルギーを蓄えられるかは天候に左右されてしまいます。
雨や曇りの日が続けば発電量が減りますし、雪がパネルに積もってしまって発電できなくなることもあります。
夏はいいですが、冬や梅雨の時期は発電量が減るので、一年を通して蓄えることができるエネルギー量にはムラがあるということを覚えておきましょう。
3.維持費が高い
「ランニングコストの低さ」がウリのZEHですが、じつはZEH設備を維持するには相当な費用が必要になります。
建築時に取り付けたらほったらかしというわけにはいきません。故障したらメンテナンスが必要ですし、寿命がきたら取り替えないといけません。
ハウスメーカーや工務店は「20年間でこれだけの差が出ます!」と、ZEHにすればどれだけおトクかということを宣伝してきます。
たしかに20年もZEHに住めば、ふつうの家と比べてかなりの光熱費をセーブできるでしょう。
ここで注意しないといけないのが、先ほど説明したような「設備の維持費」は度外視しているということです。
ハウスメーカーが言う「ランニングコストが安い」というのは、単純に電力の消費量や光熱費だけで比較しているだけなのです。
太陽光パネルを取り替えるとなると、かなりの出費になってしまいます。それまで節約できていた費用がぶっとんでしまうかもしれません。
4.「快適な暮らし」から遠ざかってしまう恐れがある
補助金をもらいたいがために、ZEH基準をクリアできるように頑張ろうとする人もいるでしょう。
ここで考えてほしいのですが、ZEHにする本来の目的はなんでしょうか?多くの人にとっては「快適な暮らし」「低コストな生活」などではないでしょうか?
ところが、ZEH基準を達成することが目的になってしまい、本来の目的から遠ざかってしまう恐れがあるのです。
ZEHの3大要素である「断熱」「省エネ」「創エネ」ごとに、どんな制限を受けてしまうのかを見ていきましょう。
断熱(熱を逃さないために)
まず、断熱を目指すことによって受ける制限です。
- 窓などの開口部を減らさないといけない
- 吹き抜けをやめないといけない
- 仕切りを余計に設けないといけない
光を取り込める大きな窓をつけたくても、ZEHを目指すなら諦めないといけません。窓が大きいと熱が逃げてしまうので、断熱効果が減ってしまうからです。
また、開放感がある家にしたくて吹抜けを設けたくても、ZEHには不向きな設計となってしまいます。
フロアはできるだけ狭くしないと効果的に断熱ができないため、細かく仕切る必要があるのです。
省エネ(消費電力を減らすために)
続いては省エネを目指すことによって受ける制限です。
- 電気式の床暖房を使用しない
- 照明は白熱灯を使用しない
- 照明のスイッチを分散しないといけない
創エネ(電力をたくさんつくるために)
最後に創エネを目指すことによって受ける制限です。
- 電力を計測する機器を、屋内・屋外に設置しないといけない(太陽光システムを管理する分電盤や蓄電池など)
- 太陽光パネルを設置するために屋根の角度や向きを変えないといけない
ZEH住宅を建てるときの注意点
ここまでは、「ZEH住宅を建てることによるデメリット」について書いてきました。
ここからは、「ZEH住宅を建てるときの注意点」について見ていきましょう。
ZEH補助金をもらうためのハードルが高い
よくある勘違いとして、「ZEH基準を満たす家を建てればZEH補助金がもらえる」というものがあります。
「ZEH対応の仕様」=「ZEH補助金の申請ができる」ではありません。
たとえ、ZEHの基準を満たしている家だとしても、補助金の申請ができない場合もあるのです。
3つのZEH基準
まず、ZEH基準について見ていきましょう。
ZEHの基準は、省エネ基準よりもさらに厳しい基準となっています。「断熱」「省エネ」「創エネ」の3つをクリアする必要があります。
断熱効果を上げることで「エネルギーを極力必要としない家」を目指します。
ZEHを達成するためには、断熱効果を表す指標である「Ua値」が0.6を下回る必要があります。
高断熱化することにより、冷暖房を使う必要がなくなります。夏は涼しく、冬は暖かい家にすることができます。
もし冷暖房を使うとしても微量の電力で済むようになります。
省エネをおこなうことによって「エネルギーを上手に使う家」を目指します。
ZEHを達成するためには、電力の消費量を基準一次エネルギーより20%削減しなければいけません。
そのために、以下のような施策が必要になります。
- 暖冷房を高効率エアコンにする
- 換気を全館空調システムにする
- 給湯器をエコキュートにする
- 照明をLEDにする
ちなみに発電によって得られる電力は「二次エネルギー」になります。
創エネをおこなうことによって「エネルギーを生み出す家」を目指します。
消費電力を上回るだけの電力を創エネによって生み出す必要があります。
創エネをおこなう方法の一例は以下の通りです。
- 太陽光パネルやエネファーム、エコキュートなどの創エネ設備の導入
- 風力発電
- 水力発電
- 地熱発電 バイオマス
ZEHを目指す人の多くが取り入れているのが、太陽光発電です。風力発電や水力発電はコストが高すぎるので、現実的ではありません。
これらのZEH基準を満たすことによって、ZEHであると「名乗る」ことはできます。が、補助金の申請をするには不十分です。
ZEH補助金を申請するための条件
ZEH補助金の申請をするには、さらに2つの条件を満たす必要があります。
ZEH補助金をもらうためには、太陽光発電や蓄電池を選ぶ必要があります。対象外の太陽光や蓄電池では補助金の申請ができないのです。
指定のものを使うためにはコストをかける必要が出てきます。そこまでして補助金をもらうべきなのかどうか
太陽光パネルや蓄電池は長期間使用するものなので、価格だけではなく保証なども合わせて検討する必要があります。
ZEHの補助金を申請するためには、ZEHビルダー登録をしている建築会社や設計会社に家を建ててもらう必要があります。
ZEHビルダーとは、政府が掲げる「ZEHロードマップ」に基づき、ZEH普及を目指すハウスメーカーや工務店などを指します。SII(環境共創イニシアチブ)という会社が公募しています。
ZEHビルダーに登録するには、以下の要件を満たす必要があります。
- 「ZEH普及目標」をもっているか
- 「ZEH普及目標」を公表しているか
- 「ZEH普及目標」達成のため、具体的な普及策をもっているか
- ZEHの実績を報告し、報告事項の一部を公表することに合意できるか
- 経済産業省の所管補助金交付等の停止及び契約にかかる指名停止措置を受けていないか
- 3つのZEH基準を達成する
- 指定された設備を使う
- ZEHビルダーの会社に建ててもらう
この条件をクリアすることによって、補助金の申請をすることができます。
ただし、申請したからと言って補助金を必ずもらえるわけでもありません。申請者が多ければ、もらえなくなる可能性もあるのです。
ZEH住宅を建てることの4つのメリット
念のため、ZEH住宅を建てることによって得られる4つのメリットについてもまとめておきましょう。
1.ランニングコストをおさえられる
太陽光発電などによって電力を自給自足でまかなえるため、月々の光熱費をほぼゼロにすることができます。
また、余った電気を売って収入を得ることもできます。
暖房や冷房をケチって我慢する必要がなくなります。
2.夏は涼しく、冬は暖かい
ZEH住宅は断熱をしっかりとおこなうので、家の中の温度が一定に保たれます。
一年を通して温暖の差が激しい日本ではありがたいことですね。
冷えに弱い女性やお年寄りでも、安全で健康な生活を送れるようになります。
温室効果ガスを減らして地球温暖化を防ぐことにもつながる「地球にやさしい家」でもあります。
3.災害に強い
「昼間に発電して蓄電池にためておいたエネルギーを、夜に使う」といった感じで、最低限の電力で生活できるZEHは災害時にも力を発揮します。
ZEH住宅なら停電が起きても電気が使えなくなるということがありません。蓄電池からの供給に自動的に切り替わるからです。
また、蓄電池から自動車への充電もできるので、避難のために移動するときにも心強いです。
停電に弱いオール電化との大きな違いです。
4.補助金がもらえる
ZEH住宅を建てて条件を満たすと、国から補助金をもらうことができます。
設備を整えるためにお金がかかるので、そこまでして補助金をもらうべきなのかどうかは検討する必要があります。