忖度
他人の気持ちをおしはかること。推察。 「相手の心中を-する」
引用:大辞林
忖度
他人の心をおしはかること。また、おしはかって相手に配慮すること。「作家の意図を忖度する」「得意先の意向を忖度して取り計らう」
引用:goo辞書
忖度
忖度(そんたく)は、他人の心情を推し量ること、また、推し量って相手に配慮することである。「忖」「度」いずれの文字も「はかる」の意味を含む。
引用:wikipedia
忖度
人の気持ちを察すること。特に明示されてはいないが、胸中を推し量って適切に取り計らうこと。
忖度の語は、2017年に、いわゆるモリカケ問題(森友・加計学園問題)における疑惑の所在を匂わせるキーワードとして、マスメディアに盛んに用いられた。直接に口利きしたわけではないが、口利きと言っても差し支えないようなやりとりが暗にあったのだろう、というような推測を表現する語として用いられる向きが多分にあった。
ユーキャン新語流行語大賞は「忖度」を「インスタ映え」と並ぶ2017年の年間大賞に選出している。
引用:新語時事用辞典
森友学園・加計学園の問題で大流行した「忖度」という言葉。
この事件をキッカケに、「忖度」という言葉を知った人も多いのではないでしょうか。
森友問題が起きてから連日のように報道で頻繁に耳にするようになったけど、じつはどういう意味なのかわかっていない人も多いのではないでしょうか?
ここでは、「忖度」という言葉の意味や語源、使い方などを、例文を交えながら紹介していきます。
目次
「忖度」は、本来は良い意味の言葉だった!?
さて、この「忖度」という言葉。なんだかネガティブな印象がありますよね。
「忖度」の意味は、「相手の気持ちを推し量ること」です。「推測する」「見当をつける」といった感じですね。
小学生でも理解できるように説明すると「相手が何を言いたいのか考えること」ということになります。
悪い意味どころか、むしろ本来は「相手に対しての思いやり」という、良い意味の言葉なんですね。
では、なぜこの「忖度」という言葉が、悪いイメージを伴っているのでしょうか?
それは、この「忖度」という言葉が広まるキッカケとなった「森友問題」にあります。
なぜ「忖度」という言葉に悪い印象を抱くのか
これが「忖度」という言葉が広く認知されるキッカケとなった、籠池氏の発言です。
森友学園の問題は複雑で説明すると長くなるのですが、簡単に説明します。
まず、籠池氏は森友学園の理事長です。一番偉い人ですね。その籠池氏が、新しく小学校をつくるために、大阪の豊中市というところに土地を買いました。
その土地というのが10億円相当の価値があるのですが、籠池氏は1億円で購入していたのです。
つまり、9億円も安く購入していたので、「これは怪しい、何かあるな」ということで疑惑を向けられたわけです。
籠池氏は安倍首相を応援する団体にも所属していて、安倍首相の奥さんの昭恵さんとも仲が良かったそうです。つまり、籠池氏は安倍首相と思想も近く、敬意を抱いていました。
そんな籠池氏は、小学校の名前を「安倍晋三記念小学校」にしたいくらいだ、とも語っていたそうです。
そして、その小学校を建てるために籠池氏が購入した土地は「国有地」といって、国が持っている土地なのです。
そのような関係があり、マスコミからはこのような疑惑が持たれました。「安倍首相からの口利きがあって、土地が9億円も安く売られたのではないか?」
つまり、「安倍首相が籠池氏を応援するために、土地の値段を安くするように(土地の値段を決める)財務省に命令したのではないか?」ということです。
それに対しての籠池氏の反論が、
でした。この籠池氏の発言を噛み砕くと、
ということになります。
忖度をおこなったのは、財務省の官僚。
忖度の対象は、安倍首相。
そのあとも「総理の意向を忖度した結果・・・」といった感じの報道が加熱していくなかで、人々の中には完全にネガティブな言葉として定着してしまった感があります。
「良い忖度」から「悪い忖度」へ意味が変わってきた
このように、森友学園の問題をキッカケとしてあたかも「悪い言葉」のような印象をともなって広まった「忖度」という言葉ですが、じつは森友問題が起こる前から、徐々に意味合いが変わってきていたようです。
もともとは良い意味で「相手の心を推測する」という使われ方だったのが、「上司などの上の立場の人に気に入られようとして、意向を推測する」というような用法に変わってきたのです。
いつから「悪い忖度」に変わってきたのかは断定できませんが、確認できている範囲でいうと少なくとも2006年に入るころには悪い意味で使われていたようです。
「消費税の引き上げは避けられないが、いまは国民を刺激したくない。しかし、ほおかむりも無責任」。そんな首相の思いを忖度したような党税調。
(「朝日新聞」社説、2006年12月15日)
その籾井氏が政策に関わるニュースに注文をつければ、どうなるか。権力を監視するジャーナリズムの役割が十分に果たせるのかといった疑問も浮かぶ。会長の意向を忖度し、政府に批判的な報道がしにくくなるのではないかとの不信感も出てくるだろう。
(「朝日新聞」社説、2014年5月8日)
どちらの事例にも共通しているのは、「忖度する対象が目上の人である」ということですね。
「相手の気持ちを推し量る」というよりは、「相手(目上の人)の顔色をうかがいながら、気に入られようとする」といったニュアンスが見て取れます。
本来は忖度をする対象は限られていなかったようですが、最近の用法では目上の人、上司、権力者といったように限定されるようになりました。
「忖度」の語源・由来は中国語だった!
さて、この「忖度」という言葉。
「忖」という文字はあまり見かけないので、文字だけを見ても読み方がわからない人も多いのではないでしょうか?
「忖」の漢字の部首を見ると「りっしんべん」がついています。これは心を意味します。「寸」は長さを測るという意味があるので、「心を測る」ということになるのですね。
じつはこの日本人の美徳や倫理観を表しているような言葉である「忖度」は、中国語が起源なのです。
中国の最古の詩集である「詩経」で、このような文章が登場します。
他人有心、予忖度之。
他人に心あり、われこれを忖度す。
つまり、「他人は自分とは違う心を持っているが、私はそれを推し量って知ることができる」という意味です。
ところが、ここでいう「他人の心」というのは「ずるい、よこしまな心」を表しているのです。
なので、「他人のずるい心を推し量り、こらしめる」といった意味なのです。
↓
他人の心を推し量る(思いやり)
↓
他人(目上の人)の心を推し量る(おべっか)
このように意味が変遷してきたようです。
森友問題が起きる前から意外と検索されている「忖度」
「忖度」という言葉を森友関連の報道で初めて聞いたという人は多いでしょう。
ですが調べてみると、じつは森友事件の前からけっこう検索されているということがわかりました。
googleが提供している「キーワードプランナー」というサービスがあるのですが、これを利用すると「月間で何回検索されているか」を知ることができます。
ここに「忖度」と入力すると、
棒グラフで検索回数の推移が表示されます。縦軸が検索回数、横軸は時間です。
ある時点で棒がいきなり高くなっていますね。122万回!これが2017年3月、籠池氏が忖度発言をしたときです。
では、森友事件が起きる前はどうでしょうか?
たとえば2015年2月だと、18100回検索されています。
たしかに122万回と比べると少なく見えるかもしれませんが、これでもかなり検索されている数字なのです。
森友問題が起きる前からこれだけ多くの人に検索されているということは、「忖度」という言葉が日常的によく使われているということが考えられます。
あるいは、特定のシーンやコミュニティなどで頻繁に用いられている言葉なのかもしれません。
いずれにしても、露出が少ない言葉であればその言葉の意味を調べようとする人も少ないはずです。
果たして、森友問題以前に「忖度」という言葉が、一体どこで使われていたのでしょうか?