囲い込み

囲い込み(かこいこみ)とは、売主から売却の依頼を受けた不動産を、仲介業者が自社で囲い込み、他社からの照会を拒否することです。

ひとことで言うと「物件情報の独り占め」です。

仲介業者は、物件情報を不動産業界全体に共有する義務があります。囲い込みによって「物件情報を隠す」という行為は、その義務を放棄するものであり、宅地建物取引業法 ?で禁じられています。

フドー先生
にもかかわらず、いまだに業界内に根強く残っている悪しき慣習。

なぜ囲い込みが起きるのか?

モモコさん
「囲い込み」って、イケナイことなんだよね。
フドー先生
うん。今に始まったわけじゃなく、ずっと前から業界内で問題になっているんだ。
モモコさん
なんで囲い込みが起きるの?
フドー先生
それは、利益を追い求める仲介業者の体質ゆえ、だよ。

売主と媒介契約を結んだ仲介業者が「意図的に」両手取引 ?を狙おうとすることにより、囲い込みがおこなわれます。

より多くの利益を得ようとする業者は、積極的に両手取引を狙います。

両手取引を達成すると、売主だけでなく、買主からも仲介手数料 ?をもらえるからです。売主だけと契約する「片手取引」と比べて、単純計算で2倍の手数料がゲットできるのです。

モモコさん
これはすごい差だね!

両手取引を達成するためには自社で買主を探す必要があります。

そのためには、他の業者に買主を探されると困るわけです。両手取引を狙う業者にとって、他社の存在は障害物そのものなのです。

これが囲い込みをおこなう動機となります。

そして、他社へ物件情報を広めないように務めたり、他社から問い合わせがあっても拒否したりするのです。

モモコさん
他社を退け、物件情報を独り占めしようって魂胆か。
フドー先生
そうやって、自社が抱えている顧客の中から購入希望者が現れるまで時間を稼ぐんだ。

売主にとっては損でしかない

囲い込みをした業者は手数料が2倍になるのでおいしい思いをするが、売主にとっては損でしかありません。

囲い込みは「他社への情報公開を拒否する」のですから、それだけ売却のチャンスが減ることになります。

物件が売れるチャンスを逃し、

買主が見つかりにくくなり、

いつまでたっても売れない状態になり、

値下げを余儀なくされる

結果的に、売りたいと思っていた価格とはかけ離れた、低い価格での取引になってしまうでしょう。

モモコさん
恐ろしや〜。
フドー先生
値下げをして売れたなら、まだ良いかもしれない。まったく売れなくなる恐れもあるよ。。。

囲い込みはこのようにしておこなわれる

モモコさん
で、囲い込みって具体的にどのようにおこなわれるの?
フドー先生
これから説明してみよう。

一般的な囲い込みの事例

一般的には「囲い込み」というと、REINS ?における他社からの問い合わせを拒否することを指すことが多いです。

専任媒介契約 ?専属専任媒介契約 ?を結んだ場合は、仲介業者はREINSに物件情報を登録しなければいけません。

フドー先生
物件の取引を、業界全体で手を組んで「早期に」「適正な価格で」おこなえるように、というのがREINSの目的だよ。
モモコさん
REINSに登録すると、多くの購入希望者に物件情報を届けられるんだったよね。

囲い込みをしたい業者の本音としては、「REINSに登録したくない」のです。REINSに登録するということは、物件情報を他社へ共有することになるからです。

ですが、法律で義務付けられているため、REINSへの登録は一応おこないます。そのうえで、極力物件情報を囲い込もうと務めるわけです。

たとえば、買主側の仲介業者(客付け業者 ?)が、REINSに登録された物件情報を見て、次のように問い合わせをしてきたとしましょう。

「その物件を買いたいと言っているお客さんがウチにいるんですけど。内覧 ?させてもらえませんか?」

その問い合わせに対し、「すでに契約済みです」「ただいま、他の購入希望者と交渉中です」といった虚偽の回答をおこない、他社を寄せ付けないようにします。これが囲い込みです。

モモコさん
ひどい!ただの嘘つきじゃん。
フドー先生
まったくその通りだよ。

その他の囲い込みの事例

その他にも、物件情報を囲い込むためのさまざまな手口が存在します。

  • ホームページやポータルサイトに掲載しない
  • REINSにマイソク ?や図面の掲載をしない
  • 広告転載区分を「不可」にする

詳細はこちらの記事をごらんください。

インターネットを活用した広告活動は十分におこなわれているか?
不動産売却のカギは、広告活動です。広告活動をしっかりおこなわない限り、売れるわけがありません。 特に現在ではインターネットでの広告...
要チェック!REINSに写真やマイソクが掲載されているか?
REINSに登録したから、きっと問い合わせがたくさん来るだろう あなたも、このようにへ登録した...
REINSの広告転載区分が「可」で掲載されているかを確認しよう
REINSに物件情報を登録してるはずなのに、なんで内覧の申し込みすら入らないんだろう・・・? ...

囲い込みがなくならない理由

モモコさん
囲い込みって絶対ダメじゃん!なんでなくならないの?
フドー先生
長年問題視されていながら、解決するのは難しいんだよ。

囲い込みをなくすのが難しい原因として、「表面化されにくい」ということが挙げられます。

つまり、囲い込みがおこなわれていても、売主がそれに気づくことが難しいのです。

そもそも売主が囲い込みというものを知らないケースも多いでしょうし、知っていたとしても「囲い込みやってるでしょ!」と突き止めるのは難しいのです。

また、不動産会社の間でも、囲い込みの事実を見極めるのは困難です。囲い込みによって物件情報の照会を拒否された客付け業者が「これは囲い込みだ」と断定することは簡単ではないのです。

モモコさん
そうなんだ。

不動産会社が営業マンに両手取引を課しているケースもあります。両手取引がノルマになっているのです。この傾向は大手に多いようです。

ノルマを課せられると、囲い込みをやらざるを得なくなるでしょう。このような体質の会社が多いということも、囲い込みがなくなりにくい原因のひとつになっていると考えられます。

フドー先生
売主が不利益を被る囲い込みを、なんとか撲滅してもらいたいもんだね。

囲い込みが横行している現在、わたしたちにできる予防策は、「囲い込みをやらない業者を選ぶ」ということぐらいしかありません。

会社の利益よりも売り主の満足度を重視してくれる、そんな業者を選ぶ努力をしましょう。

まとめ

  • 囲い込みは「物件情報の独り占め」
  • 「意図的に」両手取引を狙う業者によっておこなわれる
  • 業者はオイシイが、売主にとっては損でしかない
  • 値下げをしまくる・売れなくなるハメになる
  • 囲い込みは表面化されにくいのでなくなりにくい
  • 囲い込みをおこなうのは大手に多い傾向がある
宅地建物取引業法(たくちたてものとりひきぎょうほう)

不動産取引をおこなううえで、不動産会社(宅地建物取引業者)が守らなければならない法律です。宅建業法(たっけんぎょうほう)と略されます。

不正な取引をおこなう宅建業者から消費者を守るために定められた法律です。

「宅地建物取引業法」の詳細を見る
両手取引(りょうてとりひき)

ひとつの不動産会社が、売主と買主の両方を仲介することです。「両手仲介」「両手」ともいいます。

売主から物件の売却を依頼された仲介業者が、買主を見つけて取引をすることで発生します。

これに対し、売主と買主のいずれかのみを仲介することを「片手取引」といいます。



「両手取引」の詳細を見る
仲介手数料(ちゅうかいてすうりょう)

仲介業者に支払うお金のことです。

物件を売り買いするお手伝い(仲介)をしてくれたことに対する報酬として、売主や買主が支払います。

「不動産の成約価格の3%+6万円+消費税」で計算します。

仲介手数料は成功報酬のため、売買が成立しなかった場合は支払う必要はありません。

「仲介手数料」の詳細を見る
REINS(レインズ)

不動産会社同士が物件の情報をやりとりするための、コンピュータネットワークシステムの名称です。

売主・買主ともに、安心して不動産取引がおこなえることを目的としています。

「REINS」の詳細を見る
専任媒介契約(せんにんばいかいけいやく)

依頼主(売主)と仲介業者との間で結ぶ媒介契約のうちの一つです。

一般媒介契約よりも売主の自由度は下がりますが、専属専任媒介契約ほど拘束されることはありません。



「専任媒介契約」の詳細を見る
専属専任媒介契約(せんぞくせんにんばいかいけいやく)

依頼主(売主)と仲介業者との間で結ぶ媒介契約のうちの一つです。

一般媒介契約専任媒介契約に比べ、売主の自由度はもっとも低くなっています。



「専属専任媒介契約」の詳細を見る
客付け業者(きゃくづけぎょうしゃ)

不動産売買において、買主と媒介契約を結んだ仲介業者のことを指します。

対して、売主側の業者は元付け業者といいます。
内覧(ないらん)

物件の購入を検討している人が、実際に物件を訪問することです。

「内覧」の詳細を見る

マイソク

物件の概要、間取り図、地図などをまとめた資料の通称です。

また、「それをもとに作成されたチラシ」そのものをマイソクと呼ぶことも多いです。

不動産会社にとっては、営業をかけるための重要な資料になります。

「マイソク」の詳細を見る