少子高齢化や人口減少が進むにつれて、さまざまな問題が表面化してきた「都心の空洞化」。
この問題を打開し、都市の中心部に活気を取り戻すべく「コンパクトシティ」構想をすすめるも、失敗に終わってしまう自治体もあるようです。
コンパクトシティは、なぜ失敗してしまうのでしょうか?
目次
コンパクトシティとは
コンパクトシティとは、市街地をコンパクトな規模に収めた都市形態、またはそのような都市形態の実現を目指した構想のことです。
日本では2013年頃から活発に議論されるようになりました。
徒歩圏内に公共施設やデパートなどの商業施設、住宅などを集約させることにより、生活の利便性の向上、経済効果の向上、財政難の改善などの効果が期待されています。
コンパクトシティが必要とされている背景
かつて高度経済成長の人口増加にともない、街の開発がどんどんとおこなわれるようになりました。
それまでは都心に集中していた住宅やデパートなどが、どんどんと郊外のほうにもつくられるようになりました。
都心部よりも地方のほうが安くて広い家に住めるため、人もどんどんと流れていきました。
人口が増加の傾向にあったころはそれでも問題なかったのですが、昨今の人口減少により、さまざまな問題が浮き彫りになってきたのです。
空き家の増加 コミュニティーの希薄化
自治体の財政難
行政サービスの低下
環境汚染
この空洞化してしまった都心部に街の機能を集め直し、再び活気を取り戻そうとするのが「コンパクトシティ」と呼ばれる構想なのです。
コンパクトシティでなにが期待できるか
市街地の活性化
デパートなどの商業施設やサービス業を街の中心部に集めることによって、経済の活性化が期待できます。
たとえば、都心から離れた地方の店舗に従業員を多く配置したとしても、お客さんが来なければ利潤を得られません。
地方に散らばった店舗や従業員を都心部に集めることにより、生産の効率やサービスの質を上げることができます。
徒歩圏内にそのような店が増えると外出の機会も増えるので、経済効果の上昇が期待できるというわけです。
住民の利便性
会社や工場が郊外に広がっていった結果、自宅と通勤の移動距離が長くなってしまいました。
デパートや公共施設を街の中心部に集めることにより、移動の時間や費用が少なくなって便利になっていきます。
移動時間が減って生まれた空き時間を、趣味や家族の時間などにあてることができるようにもなるでしょう。
また、徒歩や自転車で移動できるようになるので、健康の増進にもつながります。
徒歩圏内に病院や介護施設を集めることにより、足の悪いお年寄りの人にとっても使いやすい街になります。
農地・緑地の保全
郊外の都市化が進んでいくにつれて、農地や緑地が失われていきました。
街の機能を都心に集めることにより、「街は街」「郊外は郊外」と役割を分け、本来の郊外の自然の姿を取り戻そうというわけです。
また、街が大きくなるにつれて通勤などの移動距離も長くなり、自動車を使う人が増えました。
その結果、二酸化炭素の排出は増え、空気が汚染されてきました。地球温暖化の原因にもなっています。
街の機能を都心に集めることができれば、自動車を使う人が少なくなるのでこの問題が改善されます。
行政コストの削減
郊外化が進むことによって行政が管理する範囲が広くなり、コストがかかってしまうようになりました。 たとえば、道路の整備や水道などのインフラなどです。
人口を都心部に集めることにより、効率良く管理できるようになります。
また、福祉や生活サービスの質を上げることにもなります。高度経済成長期に郊外に散らばっていった人たちが現在は高齢化していて、生活が孤立してしまっている状況です。
そのような人たちを都心部に集めることにより、病院や介護施設などにアクセスしてもらいやすくなります。
コンパクトシティの問題点
すべての人を移住させることは難しい
都心部に住宅を集めるとしても、郊外に住んでいる人すべてに移住を勧めることなど不可能です。 ある程度の人口が都心部に移ったとき、郊外に残された人たちの利便性がさらに悪化することになってしまいます。
また、林業や農業に従事している人々は、郊外での生活こそが適しているライフスタイルとなります。
そのような人が郊外での暮らしを続けていくためにはインフラ整備を維持する必要があるので、自治体としての維持コストがかかることになります。
住環境の悪化
都市化が集中することにより、住環境が悪化する恐れがあります。 たとえば、騒音などの住民間トラブルの増加や、治安が悪化
治安の悪化
災害時の問題
人が一箇所に集まるということは災害時の被害が大きくなることにつながるのでは、という懸念の声もあります。