買い替え特約とは、物件を購入するときに売主との間で交わす取り決めです。
「○年○月○日までに、現在の住まいが○○○万円以上で売れなかったときは、この契約を解除する」といった取り決めをおこなうことにより、もし指定した期日までに現在の家が指定の金額で売れなかった場合、購入の契約を白紙に戻すことができます。
買い替え特約を付帯するには、売主の同意が必要です。
買い替え特約はこんなときに使う
たとえば、次のような人を想像してみましょう。仮にAさんと呼ぶことにします。
- 住み替えをしたい
- 新居の購入に充てる資金に余裕がない
- 現在の家を売却する前に新居を購入したい
スムーズに住み替えをおこなうためには、「売却」と「購入」のタイミングを合わせるのが理想ですが、現実には難しく、なかなかできるものではありません。なので、売却か購入のどちらかを先におこなうことになります。
さて、どちらを先におこなうべきなのでしょうか?普通、Aさんのように資金に余裕がない場合は、売却を先におこないます。
今の家を売却することによって資金が得られるので、新居を購入するための資金計画を立てやすくなるためです。
このように先に売却することを売り先行 ?といいます。対して、先に購入することを買い先行 ?といいます。
ところが、Aさんは資金に余裕がないにもかかわらず、売却よりも先に新居の購入をしたいと考えています。
今購入しないと部屋が埋まってしまう「人気マンション」を見つけてしまったからです。Aさんは買いたくて買いたくて仕方がありません。
本来なら先に売却をするべきですが、いつ売れるかもわかりませんし、売れる頃にはマンションが埋まってしまうかもしれません。どうしても先に買っておきたいのです。
ですが、ここでAさんに不安がよぎります。「買ったはいいけど、もし今の家が売れなかったらどうしよう?」「希望する価格で売れなかったら、どうしよう?」
もし売れなければ、新居の購入に充てるローンの頭金などを捻出できません。絶対に売れないと困るのです。
「もし売れなかった場合には、購入を白紙にできればいいのに・・・」
そのような都合のいいことを実現できるのが「買い替え特約」なのです。
売却できなかった場合、購入の契約を白紙にできる
買い替え特約を結んでおくことにより、「もし売れなかったら」購入の契約を白紙にできるのです。
さらに、違約金なども発生しませんし、あらかじめ売主に支払っていた手付金まで返ってきます。
売主の同意を得たうえで、「○年○月○日までに、現在の住まいが○○○万円以上で売れなかったときは、この契約を解除する」といった形で購入物件の売買契約書に記します。
売主にとってはデメリットでしかない
もうおわかりの通り、買い替え特約は買う方のメリットは大きいですが、売る方にはデメリットしかありません。
キャンセルするかもしれない人と、わざわざ売買契約を結びたいとは思わないでしょう。
なので実際には、買い替え特約の同意を得られることは少ないでしょう。特に、人気物件であればあるほど他に買ってくれる人がいる可能性があるため、わざわざ買い替え特約をつけたがる買主に売りたいとは思わないはずです。