不動産売却が成立した際、仲介をしてくれた業者に仲介手数料 ?を払うことになります。「売却の手伝いをしてくれてありがとう」という、売主からの報酬です。
ところが、中には売主からの仲介手数料を「無料」にする仲介業者もあります。
売主にとっては、「手数料を払わなくて良いなんて、なんてお得なんだ!」と思いますよね。
「仲介手数料無料」はお得に見えて、じつは「売主にとってはなんのメリットもない」というのが実情です。
メリットがないどころか、結果的に「希望価格よりも安く売却するハメになってしまう」というデメリットを受けることになります。
ここでは、「仲介手数料無料」の裏に隠されたカラクリとワナについて説明します。
「仲介手数料無料」には裏がある
「仲介手数料無料」のカラクリを説明する前に、少し仲介手数料についておさらいしておきましょう。
仲介手数料とは、仲介をおこなった業者に対して、売主や買主が支払う料金です。仲介業者は、この仲介手数料を主な収益源としています。
ということは、この仲介手数料を無料にしてしまうと売り上げが立ちません。タダ働きも同然です。お金が入ってこないのですから、経営として成り立たなくなってしまいます。
ここが大きなポイントです。売主からの仲介手数料を無料にできるのは、「買主から手数料を取る」ことを狙っているからなのです。
「買主から手数料を取る」ということは、「売主と買主の両方と契約することを狙っている」ということです。
「仲介手数料無料」は両手取引をおこなうことが前提
売主と買主の両方と契約を結ぶ両手取引 ?を仲介業者が達成すると、売主の仲介手数料を無料にしても買主から仲介手数料をもらうことはできますよね。
だから、売主に対しては「仲介手数料は無料!お得ですよ!」とうたうことができるのです。
売主だけを仲介する「片手取引」では、業者のところに一銭もお金が入ってきません。売主からの仲介手数料を無料にできるのは、両手取引をおこなうことを前提としているからなのです。
売主からの手数料を無料にする代わりに、買主を自社で探して買主から手数料を取ろうと目論むというわけです。
両手取引によって起こりうる弊害
両手取引を狙うためには、業者は自社で買主を探す必要があります。そのために物件情報の囲い込み ?をおこないます。
囲い込みをおこなうことにより、広告エリアが圧倒的に狭くなり、物件情報が露出しなくなります。このようにして、他社が買い手を探してくる可能性を潰します。
このような形で、物件情報をクローズ化します。その結果、高く売れるチャンスを逃すことになります。
日本のどこかには、その物件を高く買ってくれる人がいるかもしれません。REINSに登録しないせいで、そのような人に物件情報を届けることができなくなります。
そして、業者としては利益をあげるために、できるだけ「早く売ろう」と努めます。早く売るには物件の価格を下げる必要があります。物件が安くなると買主が喜ぶからです。
「あと◯百万円値下げしませんか?その値段なら購入するという人がいるんですが!」といった感じで、業者から値下げの提案を受けます。
その結果・・・売りたいと思っていた値段とはかけ離れた、低い価格での売却となってしまうのです。
仲介手数料が無料になってもたかが知れている
仲介手数料は、「成約価格の3%+6万円+消費税」で求められます。
- 2000万円で売れた場合:71万2800円
- 3000万円で売れた場合:103万6800円
これが物件を売却した際に支払う仲介手数料の額です。あくまでもこの計算式は「上限」を定めたものなので、業者によってはもっと安くなっている場合もあります。
仲介手数料が無料になったところで、100万円ほどの経費が浮くだけなのです。
きちんと広告活動をおこない、物件情報を行き渡らせ、その結果「最高価格を提示してくれたお客さん」に売却をすれば、発生する儲けは100万円どころではないでしょう。
不動産売買は非常に大きなお金が動く取引なので、300万円も400万円も高く買ってくれる人が見つかることも珍しくありません。
「仲介手数料無料」にこだわるせいで、その可能性を殺してしまうことになります。
「仲介手数料無料!」とうたっている業者があれば、その裏にはこのようなカラクリがあるのではないかということを、まずは疑うべきです。
まとめ
「仲介手数料無料」のカラクリをおさらいしましょう。
(そのためには両手取引をおこなう必要がある)
(買主から手数料を取れるので、売主の手数料を無料にしても利益が取れる)
(広告を打たない、REINSにも登録しない)
(どこかに高く買ってくれる人がいるかもしれないのに情報を届けられない)
(物件を安くすれば買いたい人が現れ、売買が成立しやすくなる)