「仲介手数料無料」は本当にお得?そのカラクリとワナとは

不動産売却が成立した際、仲介をしてくれた業者に仲介手数料 ?を払うことになります。「売却の手伝いをしてくれてありがとう」という、売主からの報酬です。

ところが、中には売主からの仲介手数料を「無料」にする仲介業者もあります。

売主にとっては、「手数料を払わなくて良いなんて、なんてお得なんだ!」と思いますよね。

モモコさん
うん、仲介手数料って何十万円もかかるんでしょ?それが無料って、お得だよね。
フドー先生
ところが、注意が必要なんだ。

「仲介手数料無料」はお得に見えて、じつは「売主にとってはなんのメリットもない」というのが実情です。

メリットがないどころか、結果的に「希望価格よりも安く売却するハメになってしまう」というデメリットを受けることになります。

モモコさん
え、そうなの??

ここでは、「仲介手数料無料」の裏に隠されたカラクリとワナについて説明します。

「仲介手数料無料」には裏がある

「仲介手数料無料」のカラクリを説明する前に、少し仲介手数料についておさらいしておきましょう。

仲介手数料とは、仲介をおこなった業者に対して、売主や買主が支払う料金です。仲介業者は、この仲介手数料を主な収益源としています。

ということは、この仲介手数料を無料にしてしまうと売り上げが立ちません。タダ働きも同然です。お金が入ってこないのですから、経営として成り立たなくなってしまいます。

モモコさん
じゃあなんで、仲介手数料を無料にできるの?
フドー先生
それは、「買主から手数料を取ることができる」という目論見があるからだよ。

ここが大きなポイントです。売主からの仲介手数料を無料にできるのは、「買主から手数料を取る」ことを狙っているからなのです。

「買主から手数料を取る」ということは、「売主と買主の両方と契約することを狙っている」ということです。

モモコさん
それの、どこが問題なの?
フドー先生
まだわからないかい?「両手取引を積極的に狙っている」ということだよ。

「仲介手数料無料」は両手取引をおこなうことが前提

売主と買主の両方と契約を結ぶ両手取引 ?を仲介業者が達成すると、売主の仲介手数料を無料にしても買主から仲介手数料をもらうことはできますよね。

だから、売主に対しては「仲介手数料は無料!お得ですよ!」とうたうことができるのです。

売主だけを仲介する「片手取引」では、業者のところに一銭もお金が入ってきません。売主からの仲介手数料を無料にできるのは、両手取引をおこなうことを前提としているからなのです。

売主からの手数料を無料にする代わりに、買主を自社で探して買主から手数料を取ろうと目論むというわけです。

モモコさん
でも、両手取引をされても仲介手数料が無料なら、別にいいじゃない。それのどこが損なの?
フドー先生
業者が両手取引を狙うということは、結果的に「安く売られる」ことにつながるからだよ。

両手取引によって起こりうる弊害

両手取引を狙うためには、業者は自社で買主を探す必要があります。そのために物件情報の囲い込み ?をおこないます。

囲い込みをおこなうことにより、広告エリアが圧倒的に狭くなり、物件情報が露出しなくなります。このようにして、他社が買い手を探してくる可能性を潰します。

モモコさん
囲い込みって、具体的にはどんなことをするの?
  • REINS ?に登録をしない
  • REINSに登録をしても写真やマイソク ?を掲載しない
  • REINS経由で来た他社(客付け業者 ?)からの問い合わせを拒否する
  • ホームページに掲載しない
  • ポータルサイト ?に掲載しない
  • 折り込みチラシもおこなわない

このような形で、物件情報をクローズ化します。その結果、高く売れるチャンスを逃すことになります。

日本のどこかには、その物件を高く買ってくれる人がいるかもしれません。REINSに登録しないせいで、そのような人に物件情報を届けることができなくなります。

フドー先生
日本中の不動産会社に物件情報をシェアできるのがREINSだからね。

そして、業者としては利益をあげるために、できるだけ「早く売ろう」と努めます。早く売るには物件の価格を下げる必要があります。物件が安くなると買主が喜ぶからです。

「あと◯百万円値下げしませんか?その値段なら購入するという人がいるんですが!」といった感じで、業者から値下げの提案を受けます。

その結果・・・売りたいと思っていた値段とはかけ離れた、低い価格での売却となってしまうのです。

フドー先生
まさに、百害あって一利なし。

仲介手数料が無料になってもたかが知れている

モモコさん
安い値段での売却になったとしても、仲介手数料が無料ならトントンじゃないの?
フドー先生
トンでもない。それは計算すればわかるよ。

仲介手数料は、「成約価格の3%+6万円+消費税」で求められます。

  • 2000万円で売れた場合:71万2800円
  • 3000万円で売れた場合:103万6800円

これが物件を売却した際に支払う仲介手数料の額です。あくまでもこの計算式は「上限」を定めたものなので、業者によってはもっと安くなっている場合もあります。

仲介手数料が無料になったところで、100万円ほどの経費が浮くだけなのです。

フドー先生
たったこれだけのお金を浮かせるために、物件情報の露出を狭めるのはもったいないよ。

きちんと広告活動をおこない、物件情報を行き渡らせ、その結果「最高価格を提示してくれたお客さん」に売却をすれば、発生する儲けは100万円どころではないでしょう。

不動産売買は非常に大きなお金が動く取引なので、300万円も400万円も高く買ってくれる人が見つかることも珍しくありません。

「仲介手数料無料」にこだわるせいで、その可能性を殺してしまうことになります。

モモコさん
そう言われれば、仲介手数料が無料になっても魅力的じゃないと思えてきたわ。

「仲介手数料無料!」とうたっている業者があれば、その裏にはこのようなカラクリがあるのではないかということを、まずは疑うべきです。

まとめ

「仲介手数料無料」のカラクリをおさらいしましょう。

1.売主からの手数料を無料にする代わりに、買主を自社で探して買主から手数料を取る
(そのためには両手取引をおこなう必要がある)
(買主から手数料を取れるので、売主の手数料を無料にしても利益が取れる)
2.両手取引を達成するために、物件情報の囲い込みをおこなう
(広告を打たない、REINSにも登録しない)
3.物件情報がクローズ化され、売主は売却の機会を失ってしまう
(どこかに高く買ってくれる人がいるかもしれないのに情報を届けられない)
4.業者としては利益をあげるために早く売ってしまいたいので、物件の価格を下げようとする
(物件を安くすれば買いたい人が現れ、売買が成立しやすくなる)
5.結果的に売りたいと思っていた値段より安い値段での売却となってしまう
仲介手数料(ちゅうかいてすうりょう)

仲介業者に支払うお金のことです。

物件を売り買いするお手伝い(仲介)をしてくれたことに対する報酬として、売主や買主が支払います。

「不動産の成約価格の3%+6万円+消費税」で計算します。

仲介手数料は成功報酬のため、売買が成立しなかった場合は支払う必要はありません。

「仲介手数料」の詳細を見る
両手取引(りょうてとりひき)

ひとつの不動産会社が、売主と買主の両方を仲介することです。「両手仲介」「両手」ともいいます。

売主から物件の売却を依頼された仲介業者が、買主を見つけて取引をすることで発生します。

これに対し、売主と買主のいずれかのみを仲介することを「片手取引」といいます。



「両手取引」の詳細を見る
囲い込み(かこいこみ)

売主から売却の依頼を受けた不動産を、仲介業者が自社で囲い込み、他社からの照会を拒否することです。

ひとことで言うと「物件情報の独り占め」です。

「囲い込み」の詳細を見る
REINS(レインズ)

不動産会社同士が物件の情報をやりとりするための、コンピュータネットワークシステムの名称です。

売主・買主ともに、安心して不動産取引がおこなえることを目的としています。

「REINS」の詳細を見る
マイソク

物件の概要、間取り図、地図などをまとめた資料の通称です。

また、「それをもとに作成されたチラシ」そのものをマイソクと呼ぶことも多いです。

不動産会社にとっては、営業をかけるための重要な資料になります。

「マイソク」の詳細を見る
客付け業者(きゃくづけぎょうしゃ)

不動産売買において、買主と媒介契約を結んだ仲介業者のことを指します。

対して、売主側の業者は元付け業者といいます。
ポータルサイト

「その分野に関する多くの情報を扱っている巨大なサイト」のことです。

不動産業界におけるポータルサイトとは、物件の情報をたくさん掲載している総合サイトのことを指します。

不動産業界の大手ポータルサイトとしては、SUUMO、HOME’S、at home、O-uccino、Yahoo!不動産などが挙げられます。

「ポータルサイト」の詳細を見る