家を売却する際には、買主にマイナスの印象を与えてしまうような欠陥やキズ、つまり「瑕疵(かし)」には気をつけますよね。
雨漏りやシロアリ、配管上の不具合など、瑕疵にはさまざまな種類があります。
買主に買ってもらえるように、
- 売却する前に瑕疵を修復する
- 瑕疵があることを告知して安く売る
などの対策をおこなうでしょう。
ところが、意外な盲点になるのが「事故物件」であるというケースです。
目に見える物理的な瑕疵ではない事故物件は、買主にも売主にも、そして仲介する不動産会社にも気付かれにくい場合があります。
事故物件であるということを認識できずに売買契約をおこなった結果、あとから事故物件に気づいた買主から損害賠償を請求されることにもなりかねません。
最悪の場合は契約解除というシナリオが待っています。
そのような事態に陥らないためにも、
- 事故物件を売却してしまった際のペナルティ
- 事故物件であることを気づくための心構え
を、しっかりとおさえておきましょう。
目次
事故物件の定義・特徴
事故物件という言葉の定義はあいまいですが、法律的に言えば「物理的瑕疵(ぶつりてきかし)」「心理的瑕疵(しんりてきかし)」がある物件のことを指します。
- 柱や床が傾いている
- 雨漏りがする
- シロアリが出る
- 配管に不具合がある
- etc.
- 自殺者が出た
- 殺人事件があった
- 火災や水害などの災害があった
- 周辺の騒音がひどい
- 周辺に暴力団の施設がある
- 心霊現象が起こる
- etc.
買おうと思った家で「自殺した人がいた」と聞けば、買いたくないですよね?あるいは、大幅な値下げを条件とするなら、買ってもいいかな・・・と思うかもしれません。
これは心理的瑕疵による事故物件です。
心理的か物理的かを問わず、「購入者が購入を躊躇するような物件」が事故物件の(一応の)定義となります。
「心理的瑕疵である」という判断の基準はあいまい
物理的瑕疵であれば、目に見える欠陥なので「これは物理的瑕疵だ!」と判断することが容易です。
ただ、心理的瑕疵に関しては目に見えない欠陥であるために、「心理的瑕疵に該当するかどうか」の判断は難しいです。
たとえば同じ「自殺者が出た家」でも、
- 1ヶ月前に自殺した人がいます
- 10年前に自殺した人がいます
この2つでは、かなり印象が変わるでしょう。
また、1ヶ月前に自殺者がいた家であったとしても、人によっては住むことにまったく抵抗がない人もいるかもしれません。
死亡に関する定義
事故物件の定義の中で、「死亡」に関するものについて考えてみましょう。
- 他殺
- 自殺
- 病死
- 自然死
殺人事件などによる他殺や、自殺があった場合は事故物件に該当します。
一方、病死や自然死があった場合は事故物件に該当しません。
原則的には以上のような基準で判定がおこなわれますが、中には判定の基準があいまいなものや例外もあります。その一例を紹介します。
自殺を図って病院で死亡した場合
自宅で自殺が起きた場合は事故物件として扱われますし、告知義務も当然発生します。
ところが、事故物件としての判断が難しいのが「自殺を図って病院で死亡した場合」です。これを事故物件と判断するべきかどうかは、専門家の間でも意見がわかれています。
たとえ自宅で死亡していたとしても、運ばれた病院内で医師の判断によって死亡と判定されるケースもあるため、「自宅で死亡していた」と判定することができないのです。
病死や自然死で日数が経過していた場合
普通の病死や自然死は、事故物件にはなりません。
ですが、死亡してからの発見が遅れて日数が経っていて、異臭が発生していたりすると事故物件扱いになります。
売買と賃貸での定義の違い
これまで述べてきた事故物件の定義は、「売買」に限ったものです。
じつは、「賃貸」と「売買」とでは、事故物件の定義が異なるのです。
借りるのと購入するのでは、その重みが違いますよね。だから、売買のほうは事故物件としての判定がシビアになります。
たとえば、賃貸の場合に事故物件であることを告知しなければいけないのは「次の借主」に対してだけです。
「その次の借主」には告知する必要がありません。彼には、「前の前の住人」に事故や事件があったことを知るすべがないのです。
都市部と農村部での違い
また、都市部と農村部でも、事故物件の判定の基準には違いがあります。
都市部に比べて農村部では人の入れ替わりが少なく、長く住み続ける人が多くなりますよね。
そのため、「その地域で起きた事件などの記憶が住民に長く残る」として、事故物件として扱われる年代が長くなってしまいます。
あなたの売ろうとしている家は事故物件ですか?
先述のように、「事故物件」の定義はあいまいです。
狭く定義すると、
- 自殺
- 他殺
- 火災などによる死亡
などのように、人の死亡に関することになります。
「事故物件」を広く定義すると、
- 暴力団などの反社会団体が住んでいる
- 騒音
- 心霊現象が起こる(と噂される)
なども含まれます。
いずれにしても「買主が購入をとまどう理由」になるものであり、物理的瑕疵や心理的瑕疵に該当するものです。
家を売却する際には、自分の家が事故物件に該当しないかを把握しておく必要があります。
前の居住者が瑕疵を隠していた可能性もある
自分が住んでいる間になにも起きてなかったとしても、前の居住者の時代に事故や事件があった可能性はあります。
前の居住者に瑕疵を告げられないまま、中古として家を買ったというケースなどです。
新築であったとしても、その家が建つ前の家屋で事故や事件があった可能性もあります。
そのようなことも踏まえ、家を売る際には「事故物件ではないか」を確認するようにしましょう。
事故物件は売れない?需要はある?
- 事故物件は売れない
- 事故物件に住みたい人なんていない
と思われがちですが、実はニーズ(需要)がないわけではありません。
それどころか、おそらくあなたが思っている以上に探している人、検索している人は多いのです。

そうすると、「事故物件」と併せてよく検索されている語句の一覧が表示されます。
たとえば、
- 事故物件 探し方
- 事故物件 検索
- 事故物件 住みたい
- 事故物件 スーモ
こういったキーワードが出てきます。これは事故物件に住みたくて積極的に探している人が打ち込んでいるキーワードですね。
- 事故物件 安い
- 事故物件 相場
- 事故物件 購入
これはどうでしょうか。「安く買えるなら、別に事故物件でもオッケー」といった感じでしょうか。
他にも、
- 事故物件 大阪
- 事故物件 札幌
- 事故物件 千葉
といったように、地域名との掛け合わせのキーワードが大量にあることがわかりますね。
事故物件を売るときの相場はいくらぐらい?
普通の物件に比べて、事故物件はだいたい6〜8割程度の価格になると思って良いでしょう。
ただ、事故の度合いや買主の予算、そして競争があるかなどによって価格は変わります。
そのエリアや物件に人気があり、交通の便が良いなどの好条件が整っていれば、思いのほか高く売れることもあるかもしれませんね。
事故物件を売るときは告知義務がある
このように、事故物件は売れないことはありません。一定のニーズがあることも確かです。
しかし、事故物件を売るときに必ず注意しなければいけないのが、「告知義務」についてです。
売主、不動産会社のそれぞれに告知の義務や責任が生じます。
事故物件に対する売主の責任
もし、事故物件を売買した場合、売主にはどのような責任があるのでしょうか?
まず、売主は売買契約を結ぶ際に瑕疵担保責任 ?を負うことになります。
これにより、欠陥や不具合のある家を売ったことに対して、売主は責任を取らなければいけません。
さらに、たとえば売主が「自殺者がいる」ということを知っておきながら、故意にその事実を隠して売却したとしたらどうなるでしょうか?
「自殺者がいる」という心理的な瑕疵についても瑕疵担保責任の責任範囲であり、買主から損害賠償や契約解除を求められる可能性があります。
この場合、先ほどの瑕疵担保責任に加え、
- 告知義務違反による損害賠償請求
- 契約上の違約金
を受ける可能性があります。
事故物件に対する不動産会社の責任
瑕疵担保責任は、あくまでも「売主が負うべき責任」です。仲介をおこなった不動産会社が負う責任ではありません。
ですが、不動産会社が
- 瑕疵の存在を把握していた
- 瑕疵を把握できて当然だった
という場合には、不動産会社にも責任が問われることになります。
この場合は瑕疵担保責任ではなく、「告知義務違反」という形でのペナルティーになります。
瑕疵の存在を把握していた場合
まず、「不動産会社が瑕疵の存在を把握していた場合」です。
たとえば、不動産会社が売主から「自殺した人がいる」と聞かされていたにもかかわらず、買主に対してあえてこれを告知していなかった場合は、告知義務違反にあたります。
よって、買主が不動産会社に対して損害賠償を請求することが考えられます。
瑕疵の存在を把握できて当然だった場合
次に、「瑕疵の存在を把握できて当然だった場合」です。
「売主の説明に不信な点がある」と気づいておきながら、深く追求したり調査しなかった結果として瑕疵が発覚した場合は、不動産会社としての責任を追求されることになります。
ただし、「通常の不動産会社がおこなうべき業務を注意深くおこなっていたにもかかわらず、瑕疵を把握できなかった」というような場合は、不動産会社が責任を負うことはないでしょう。